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図5 北海道南西沖地震発生の6分後、および7分後の海面隆起(左図)、と流速ベクトル分布(右図)

 

島の最南端付近の海底地形のようすを図6に示す。島の最南端から南方に「奥尻海脚」と呼ばれる浅海部が舌状に南に向かって延びている様子を見ることができる。このような場所では、津波のエネルギーはここで、凸レンズに出会ったように、背後の海岸に津波伝播線が集中する傾向を持つ。さらにこの舌状の浅海部は、南にゆくほど徐々に深くなっているために、伝播線は大きく左にカーブする。そしてカーブした先で焦点を結ぶ。そこがちょうど海岸線に行き当たっていて、その場所が初松前であったのである。

 

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図6 奥尻島南方海域に延びる「奥尻海脚」

 

3. 波源の位置がちがっていたら特異点は移動するか?

北海道南西沖地震の津波の際には、初松前に津波のエネルギーが集中した理由は数値計算によって検証されたが、それでは波源が、今回の津波とは異なる位置であったら、全く別の場所に焦点を結ぶことになるのであろうか?

この点を明らかにするために、奥尻島の南端沖海域に、西方から津波が押し寄せてきたときの、津波の進行線(幾何光学の光線に相当する)を描いてみた。進入方向は、真北から東方向66度、76度、90度(真東向き)の3通りの異なる方向からとした。結果は図7の通りで、津波の入社方向角が多少かわっても、島の最南端背後のほとんど同じ点に津波伝播線が焦点を結び、特異点の位置はほとんど変わらない。そしてその位置が、初松前の位置に当たっている。

 

 

 

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