第3章 航海用電子海図(ENC)データ
ENCは各国水路部より発行される公式のデジタル海図データで国際水路機関(IHO)が管理する国際基準「IHOデジタル水路データ転送基準(S-57)」に基づいて作製されている。ENCは電子海図表示システム(ECDIS;Electronic Chart Display and Infomation System)内のデータベースであるSENC (System ENC)に転送される。ECDISはSENCのデータを処理して海図情報、航海情報等を表示する。
また、SENCはENC更新情報(ER)によって最新に維持される。
3.1 IHO基準S-57
IHO基準S-57は1993年11月にVersion2.0(DX90フォーマットと呼ばれた)が開発され公表された。しかしながら基準の解釈によって各国のENCが異なることやアップデート機能の不備等が指摘された。1996年11月にS-57、Version2.0の諸問題を解決したS-57、Edition3.0が開発・公表された。S-57、Edition3.0は、4年間の凍結期間の後2000年11月にS-57、Edition3.1にバージョンアップされた。
S-57、Edition3.1へのバージョンアップは属性値追加だけでフォーマットの変更を伴わないマイナーバージョンアップとなっている。そして、このバージョンは2年間凍結される。
IHO基準S-57は以下のように構成される。
・「Part1」;参考文献リストとこの基準で使用している用語の定義を含む一般的な序論を示す。
・「Part2」;基準全体の基礎となる理論的データモデルを記述する
・「Part3」;データモデルを履行するために使用されるデータ構造とフォーマットを定義し、データをそのフォーマットにコード化することのための一般的なルールを定義する。
・付録
・「Appendix A」;海図をデジタル化するためのオブジェクトカタログである。これは公式にIHOが認めた、交換セットとして使用できるデータスキーマである。
・「Appendix B」;ENCのための各オブジェクトの地理的、意味論的描写をコード化するために使用してきた申し合せを述べる。この文書はIHO発行の「IHOの海図仕様--M4」に可能な限り沿うように作られている。IHOが認めた製品仕様を含む。