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4.6 今後の追尾率の調査について

第3章3.2.1項では、定義した追尾率で追尾性能を一律に評価できることを示した。併せて、3.2.2項では、定義した追尾の失敗数と成功数の割合による成功率では追尾性能を一律に評価できないことを示した。作業部会及び委員会における審議で、成功率のデータは、「ある場所で、ある時間帯で得られた特定の観測値となってしまっては意味がない。」「停泊船の多いところなので追尾の成功率は90%に落ちる。」「偽像の多いところなのでこの付近では追尾率が90%に落ちる。」等の使い方があるだろうが、「成功率が日々のデータにより変わっていく数値では使えない。」との指摘があったこともあり、今後のシステム検討の参考とするため、追尾率を本質的に把握するために必要となる調査と解析について検討した。

 

1) 追尾率は気象(風雨)の状況と船舶分布の変化により変動することを忘れてはならない。そして、気象(風速、降雨量、強風日数)の状況及び船舶分布の変化を実際に把握することが極めて困難であることも忘れてはならない。例えば東京湾における過去の気象(風雨)の状況と船舶分布の変化は過去の統計などから知ることは可能であるが、気象(風雨)の状況と船舶分布の変化によって追尾率が変動していることの調査結果が無いこと及び追尾率の変動を誰も予測できないことも事実である。

 

2) 現時点では、追尾率と風雨との関係の詳細については不明であるが、もし、風が強くなると追尾率が低下してくるデータが集められたとすると、そのデータを集計した結果、風速が平均20m/s、標準偏差が5m/sで、追尾率が50%であった時は、追尾率はその風速依存性によって図4.6.1に破線で示すように低下していると考えられる。同様に、降雨強度が平均20mm/h、標準偏差が5mm/hで、追尾率が50%であった時は、追尾率はその降雨依存性によって図4.6.1に破線で示すように低下していると考えられる。

風の影響度は風向・吹送時間、海流や地形にも関係があるので、風速と追尾率の相関関係は一律ではないし、また、雨と風の相乗効果も追尾率に影響するので、実際にこの相関関係を調査するのは極めて困難である。一応気象条件の悪化に伴って追尾率は低下するものと想定する。

 

 

 

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