日本財団 図書館


2) 今後の課題

第3章の新方式レーダーによる追尾方式の検討では我が国の海上交通システムの追尾方式の改良案を示した。既存の追尾処理は基本的には線形フィルタであるが、近年では人間の知的機能を工学的にモデル化・実現するシステムにニューラルネットワーク、ファジーシステムなどが提案されている。このような知的システムの非線形性に着目し、これらを信号処理に適応した知的非線形フィルタによる新たな追尾処理に関する今後の課題(注1)について次に示す。

 

1] 追尾処理の高度化(知的処理化)

例えば、非ノイマン型コンピュータによる実時間で業務処理の実用化が実現できる近い将来においては、追尾処理の知的処理化に容易に対応することが可能となろうが、現時点では追尾処理の高度化(知的処理化)及び知識獲得(自動学習)などすることは極めて実現困難であり(再現性を保証するのが困難である)、今後の課題である。

 

2] 追尾処理の高度化(並列処理化)

例えば、エキスパートシステムなどによる前記同様の人工知能化に関するものであるが、現時点では追尾処理の高度化(並列処理化)及び知識獲得(自動学習)などすることは極めて実現困難であり(正しい知識を必要なだけ入れたシステムを正しく使えば正しい答えが出ると言うような事は非現実的だと気付くだけである)、今後の課題である。

 

(注1) 知的システム(マシン)と問題点

AI(artificial intelligence)技術はまだまだ未熟な技術であるが、知的システム(マシン)と問題点などをつぎに示す。

Lispマシン:Lisp(リスト処理用言語)のプログラムを処理するための処理装置である。大規模で複雑なLispのプログラムを(並列)処理するために記憶容量の制約と処理速度の限界が問題となってきた。

リダクション(reduction)マシン:式(redex: reducible expression)を書き換えて(reduction)ゆくことを計算とみる処理装置である。停止性は一般には保証されない。また、システムの停止性を判定する一般的な手続きは存在しない。

推論マシン:Prolog(述語論理をベースにした記号処理向き逐次型言語)に代表される論理型のプログラムを処理するための逐次型又は並列型の論理型/推論マシンである。LispやPrologのような言語では、プログラムとデータは使うモードによって変わり得るので、一貫性が失われる可能性があり、保護手段が必要になる。

 

参考文献:

社団法人 人工知能学会誌 Vol.14、No.3、1999.5

森健一翻訳 S.M.ワイス/C.A.クリコフスキ、エキスパートシステムの設計、近代科学社、昭和62年

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION