中ノ瀬航路を航行する船舶の追尾で失敗する場合があることが容易に理解できる。また、本牧レーダー局付近及び中ノ瀬付近に存在する船舶と陸上の建造物とによってレーダー電波の多重反射による偽像が発生する。この偽像が発生している領域を航行する船舶の映像は、強い偽像に埋もれることがあり、その追尾で乗り移りとなる可能性があることが分かった。
なお、アンケート調査の結果などから、当初設計ではロストと乗り移りは各々50%となると想定していたが、実際には乗り移りよりロストする方が少し多いことが判った。乗り移りの場合、そのIDの再付与について、は再確認が必要であるが、極めて困難である。ロストの場合は、ロストマーク(?)が表示されるので、容易にそのIDを再付与すべきものが判るほか、過去の航跡からも再付与すべき映像が判断できるので良い結果が得られた。(注1)
3.6.6 乗り移りについて
設計当初から複数の船舶が同航、追い越し、反航(行き会い)、交差する場合など、互いに接近した場合に追尾で乗り移りが発生する可能性があることは予想していたが、今回の実態調査結果で接近した場合に乗り移った事例が得られた(表3.4.1.1参照)。
乗り移りの防止対策に関し、新方式レーダーによる追尾性能向上の効果が得られることについては、昨年度の中間報告書第3章3.5項の新方式レーダーの考察で指摘したとおりであるが、追尾ゲート内に平滑位置が存在する確率が、処理周期が半分になることで従来レーダーによる確率を0.5とすると、1.9倍の約0.94になることとデータ数が2倍になることで平滑位置の変動が従来の約0.7倍に減少し、従来レーダーによる確率を0.5とすると1.5倍の0.75になることが期待できるので、新方式レーダーの採用は接近した場合における船舶の追尾で乗り移り(図3.6.8参照)防止対策に有効と考えられる。
なお、本牧レーダーの処理海域におけるような船舶の追尾に関する追尾性能向上には、新方式レーダーによる追尾性能向上によるほか、別途の対策も必要となろう。
(注1) 但し、乗り移り後にロストとなる確率を含めて考えない場合。乗り移り後にロストとなる確率を含めて考えた場合には、全てロストとなり乗り移りは無くなることになる。