しかしながら、その技術基準も確定しないまま、IMOがSOLAS条約を改正して船舶に設置義務を課すこととしたため、混乱に一層の拍車をかけたように見える。
当座は船舶のみの設置ということで済ますにしても、沿岸や内水域、狭水道、海峡、河川、港湾なと航行障害物の多い水域では陸上AIS局設置の問題も出てくる。早晩VTSにも組み入れることにならざるを得ない。そうなれば、VTS業務にとっては画期的な変革をもたらすことになると考えられる。しかし、一方で設置義務を課せられない小型船舶への対応をどうするかという問題もある。法的取締り船或いは設置義務化に反対している漁船はどうするか。また、AISの通報位置はDGPSによる測定位置が基本であったが、米国がGPSのS/Aを解除することを発表したことから、DGPSの今後の取扱いをどうするかの問題もある。DGPSは世界で既に200局以上が運用されており、当分は連用を続けるということで各国は合意しているが、その動向には常に注意を払っておく必要がある。
製造業者の集まりである国際電気会議(IEC)においては、AISトランスポンダの型式証明を獲得するための試験条件について審議しているが、設備義務化の発効までの時間的制約が深刻になりつつある。
わが国においても、国内法の船舶安全法、電波法施行規則、無線設備規則等の改正をこの時期に合わせて行わなければならないし、また、場合によっては無線機器型式検定規則の改正も必要になる。そのためには、技術基準の国際的な動向を十分に把握して、体制を整えておくことが肝要である。
その意味において、この委員会には今後とも出来る限り出席するよう努力すべきであろう。