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VIII. 銀行からみた電子貿易取引の今後の課題

 

1. 銀行における貿易金融業務の実状

 

1.1 銀行取引の電子化の進展

 

日本における、企業と銀行間の取引は、様々な分野で、相当程度に、電子化・効率化されてきました。

例えば、企業の国内為替取引(振込)は、現在では、その8割以上が、企業のホスト・コンピュータやパソコンから、通信回線経由で銀行に送信され、電子的に処理されています。外国為替取引の分野でも、外国送金依頼や輸入L/Cの開設依頼等はもちろん、最近では先物為替の売買予約なども、企業のパソコンから直接、取引を行うことが可能となっています。

このように、各種取引の電子化が進展する一方で、貿易金融取引のみは、依然として、様々な書類の授受によって行われており、貿易に携わる企業及び銀行の双方にとって、残された労働集約的な業務になっています。

 

1.2 銀行の貿易事務の実状

 

どのように労働集約的か、ご理解頂く為に、銀行の貿易金融事務(輸出取引)の例を述べますと、およそ次のようになります。

 

・午後2時を過ぎるころ、銀行の営業店の、外国為替担当者の机の上には、企業から持ち込まれた貿易書類が、山積みになっています。これから直ぐ持ち込むからという企業からの電話も入ってきます。

・これらの貿易書類の内、当日買い取りを行うものは、一定の時限までにポジション(為替の売り持ち・買い持ち)の報告と勘定処理を行う必要があります。担当者は限られた時間の中で、手際良く処理しなくてはなりません。

・貿易書類が揃っていること、法令上の瑕疵がないこと、L/C付の場合はL/C条件に合致していること等を確認した上で、上司の承認を受け、ポジションの報告や勘定処理を行った上で、事務センターへ発送します。

・事務センターでは更に、多数の担当者が集中的に貿易書類の内容を再確認し、海外の銀行へ発送する手続きを行います。

 

このように、貿易金融業務は、銀行にとって、事務コストがかかる上に、潜在的な事務リスクも抱える業務となっており、その電子化・効率化は大きな課題となっています。

 

 

 

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