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「近年、書類面で実務のかなりの簡素化が達成されている。船荷証券は、海上運送以外の輸送形態に使用されているのと同様な流通性のない書類によって、しばしば代替されている。これらの書類は、「海上運送状」(sea waybill)、「定期船運送状」(liner waybill)、「貨物受取書」(freight receipt)などの様々な名称で呼ばれている。流通性のない書類は、最初の買主が、転売先である次の買主に、紙の書類を引渡すことによって、輸送中の物品を転売することを望む場合を除き、使用上全く満足されるものである。輸送中の転売を可能にするために、売主がCFR条件とCIF条件の下で船荷証券を提供する義務は、必然的に保持されなければならない。しかし、契約当事者は、買主が輸送中の物品の転売を考えていないことを知っている場合には、売主を船荷証券提供の義務から免除することを特に合意するか、あるいは、船荷証券の提供が要求されないCPT条件またはCIP条件を使用することができる。」

 

3.2.3 ICC国際商慣習委員会の調査

通信、運輸、保険、金融等の商業機関の発達により、隔地取引が促進され、主として輸送形態別の物品引渡方式に関する取引慣習が生成・発達したのです。海運業の出現によってFOB条件やCIF条件が発生し、鉄道輸送に出現によりFORまたはFOT条件が生成・発達します。これらの取引条件は、運送の手配をいずれの当事者が行うのか、売主は物品を何時・何処で・どのような方法で運送人へ引渡すのか、これに関連して、売主および買主がそれぞれ負担する危険と費用の配分はどうなっているのか、売主から買主に提供する運送書類、その他の書類にどのようなものがあるのか、といった売買当事者の基本的な義務を意味します。したがって、航空運送によって売買契約の引渡し履行を行う場合には、航空運送に相応しい取引条件が必要になります。反対に、複合一貫輸送を利用するときに、FOB条件で売買契約を結ぶのは適切でありません。コンテナ輸送の発達に伴ってFCA、CIP、CPTがインコタームズに設けられました。また複合一貫輸送により仕向地まで持込んで引渡す取引が普及したので、DDUやDDPが設けられました。これらの新しい取引条件が、実際に、それぞれの輸送形態を使用する売買契約に適切に用いられているのでしょうか。

ICC国際商慣習委員会は、1990年インコタームズの改訂準備に際して、どのような取引条件が一般に使用されているか、どのような箇所を改訂したらよいのか、インコタームズの普及を図るにはどのような方法が効果的であるか等の情報を収集する目的で、40数項目から成る質問書を作成して、各国の個人、企業および業界団体に対してアンケート調査を実施しました。それに対して、28カ国の個人、企業及び業界団体から200を超える回答が寄せられ、その中間報告が行われました30

 

30 ICC Document 462/44, 2 March 1998.

 

 

 

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