同諸島には公式に名前が付いている島だけで1892島あるそうだが、今回訪問したサンクリストバル島は、その中で5番目に大きい島である。定期便の通う空港はこの島と、もう一つバルトラ島の2カ所にある。グアヤキルからの飛行時間は1時間半だが、時差が1時間あるので30分しか経っていない時刻に到着する。
そのサンクリストバル島にあるINAMHIのサンクリストバル気象観測所では、一般地上気象観測のほかラジオゾンデのデータを受信解析する高層気象観測装置があり、同国で唯一の高層気象観測が実施されている。海面温度もマニュアルであるが1日3回観測されている。ここでは他に米国海洋大気庁(NOAA)などの外国の機関や共同研究などにより各種の実験的観測が行われている。
同諸島はエルニーニョの監視においても重要な位置にあり、日本の気象庁が設定している「エルニーニョ監視海域」のうち最も重要とされる「B海域」に属する(図3)。気象庁はこの海域の海面水温が平年より高い状態か低い状態が続いたかどうかで、エルニーニョ現象やラニーニャ現象が起きたか否かを判定しているのである。1997年から1998年に掛けて史上最強といわれるエルニーニョが発生した時期に、インドネシア周辺で焼き畑や森林の火災が消えず煙による大規模な被害があったことはまだ記憶に新しいが、これもエルニーニョの影響による雨期到来の遅れが大きな要因とされている。このような地球規模の重要性から同地域は世界的に注目を集めており、複数の国々がここを舞台にプロジェクトを実施し、外国から研究者等が訪れることが多いのもこのあたりが理由である。日本の研究者による熱帯域におけるオゾンと水蒸気の変動を明らかにしようというSOWER/Pacificという長期観測計画も、その一つである。1994年に訪れたJICA専門家も、ここにエルニーニョ監視と地球レベルの環境監視のために、世界気象機関WMOの全球大気監視計画(GAW)に沿った観測施設を設置することを提言している。