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1991年11月に「海外情報収集調査」で訪問したことがあり、その後1994年にはJICAにより気象分野の短期専門家が派遣されている。高地地域の最近のトピックとしては火山の活動が挙げられる。エクアドルは南米ではチリと並んで活火山の多い国で、世界一高い活火山のコトパクシ山(海抜5,897m)を始めとして活火山が10個程ある。最近ではPichincha(海抜約4,700m、キトーの西10数km)とTungurahua(同約5,000m、キトーの南140km)の二つの火山の活動が活発で、1999年中に何度か噴火している。キトーに近いPichincha山の噴火ではキトー市内や空港でも火山灰が降ることによる被害が起きている。火山活動の監視そのものはINAMHIとは別の組織である地球物理研究所の担当だが、噴火した際に上空に広がった火山灰の移動については、INAMHIの気象予報が頼りである。地上に降る灰の予測ももちろん必要だが、上空に漂う火山灰に航空機が巻き込まれるとエンジンが灰を吸い込んで事故を起こす危険があり、運航の安全を守る点からも、衛星観測データの利用などによる監視・予報体制の改善が望まれている。

次に訪れたグアヤキルはグアヤス川に沿ってできたエクアドル最大の港町である。国際空港の発着便数もキトーより多く、こちらもエクアドル一だそうだ。キトーの空港が18時間運用であるのに対し、グアヤキルの方は24時間空港である。人口でも最大の都市で、200万人を擁する。

アンデス山脈の西すなわちコスタ地方と呼ばれる太平洋側地域に降る雨は主としてグアヤス川に流れ込む。その川が1月から4月の雨期に氾濫することは年中行事のようなもので珍しくないが、それによる農作物を中心とした被害は深刻なものがある。特にエルニーニョ現象が起きている年は平年の何倍という降水量となるため、様々なセクターに甚大な被害を及ぼす。1982年から1983年にかけてのエルニーニョでは、家屋、運輸、農業、工業などの被害総額6.5億ドル、1997年から1998年にかけて起こった観測史上最強といわれたエルニーニョ時には、道路、農業、漁業などに計30億ドルの被害があったと算定されている。後者は、同国のGDPの15%にも相当した。

防災という点に関しては、首相府直轄の国民防災局(Direccion Nacional de Defesna Civil)という組織がある。地方自治体レベルまでしっかり組織され、情報伝達、避難場所についても地域ごとに取り決められている。このように整った体制がある中で上記のようなグアヤス川流域の洪水被害を軽減するには、気象予警報体制の改善が有効である。具体的には、専門家の目で見るとまずはグアヤキルヘの気象レーダの設置が第一だというところに落ち着くようで、1994年の派遣専門家の報告や、1997/1998に実施された世界気象機関(WMO)によるF/Sの調査レポート、いずれにもそう書かれている。確かにグアヤキルは、グアヤス川流域並びに干ばつの水資源管理が望まれる南部海岸地方をも併せてレーダ観測するのに、最適な位置にあるといえるのである。

 

3. ガラパゴス!

いよいよ本題である。といっても今回の調査旅行のメインの目的地ではないし、一泊しただけということもあり、それ程深くは書けないことをお許し願いたい。そもそもの訪問目的は、地球環境・エルニーニョに絡んだプロジェクトサイトとしての可能性調査である。ともあれこんなところへ出張で行けたことは幸運だったと思う。ここをサイトとして提案した専門家のお陰(?)である。

 

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図2 ガラパゴス諸島

 

 

 

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