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エクアドル、ガラパゴス調査

篠木誓一*

 

1. はじめに

昨年の10月から11月にかけ運輸省の補助事業である「案件形成事業」として、エクアドル、ペルー、ボリビアの南米3か国を調査する機会に恵まれた。各国の気象局のほか、防災機関などを訪問調査し、新規気象関連プロジェクトの形成を検討することを目的として実施されたものである。

南米に足を踏み入れるのは今回が初めてである私にとって、南米は遠い、というのが第一印象であった。ルートは幾通りかあるようだが、我々の場合は米国のダラスで乗り換えてマイアミヘ行き、一泊してからエクアドルの首都キトーへ入った。かかった時間もさることながら、ほぼ昼夜逆転の時差の影響がきつかった。夕方強烈な眠気に襲われたかと思うと、夜は一向に眠れなかったり、今日は寝られそうだとベッドに入ると3時に目が覚めその後一睡もできないで朝になったり、と大変な思いで始めの何日間かを過ごした。その数日間がガラパゴスを含むエクアドル滞在だったわけである。

さて、そんな調子でのスタートであったが、とにかく調査は開始された。

 

2. キトーからグアヤキルへ

 

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図1 エクアドルの位置

 

南米旅行にはもう一つの難関がある。標高の違いである。今回の調査でも、最初の地キトーが標高3千メートル近く、同じエクアドルのグアヤキルとガラパゴスは海が近い低地。続くペルーのリマも同じく低標高だが、次のボリビアのラパスは3千6百メートルを超えるまさに富士山頂並みで、ラパスの空港は4千メートルをも超えている。最後のサンタクルスはまた標高4百メートルの低地という具合である。高地では高山病の症状が出ると聞いて出発前から心配した。空港でタラップを降りたら月面に着陸したと思ってゆっくり静かに歩けと言われ、そうしてみたりもした。でも、空気が薄いといってもあるではないかという感じで、幸いそちらに関してはそれ程困難は感じないで済んだようである。もっとも最初は、時差ボケなのか高山病なのか分からないという状況ではあったが。

さて首都キトーは標高2,850mの高地にあり坂道も多く、そのせいなのか気圧が低いための燃料の不完全燃焼なのか、車の窓を開けておくと排気ガスの臭いで頭が痛くなった。ただしそれ以外は気候的に非常に快適で、それも一年を通してこんな気温ですと聞くと、これが赤道直下なのかと意外な感じがした。月平均最高気温が年間を通じて20〜22°、同じく最低気温は7〜8°である。言うまでもないことかもしれないがエクアドルとは英語でいえばequatorつまり「赤道」という名前の国である。首都キトーもその赤道の極めて近くにあり、車で郊外に出るとすぐ、北半球に入ったり南半球に戻ったり、といったことが起こる。赤道に近い渡航経験国としてはシンガポール、インドネシア、ケニヤなどがあるが、ケニヤも首都ナイロビは標高1,600mにあり、気温の高低は季節より標高で決まるといわれるところはエクアドルと類似している。元来気温の季節変化の少ない赤道近辺の特徴といえる。

一般気象業務を担当しているエクアドル気象局INAMHI(Instituto Nacional de Meteorologia e Hidrologia)はエネルギー・鉱山省に属し、本局はキトー市内にある。

 

* (財)日本気象協会 国際事業部長代理

 

 

 

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