出典:Office of the Commission for the Management of Land Traffic
上記は、運用されていた公共交通機関が住民のニーズに合っていないため、1972年から1995年の間に公共交通機関の利用率が減る一方で自家用車の利用数が増えていることを示している。
主な問題は以下の通りである。
1) 渋滞
道路の容量が需要に追いつかないことと道路網の構造が非効率的であることから、需要と供給のバランスが取れていない。渋滞が増加して公共交通、特にバスのサービスが低下している。混雑した道路を利用する交通機関は、時間がかかるし待ち時間は長い、エアコン付バス以外は乗り心地も悪い。特に中心部での信頼性が低くなっている。バンコクの交通の特徴は混雑と遅延の程度が日々異なることである。これは飽和した交通事情の特徴であるが、たとえば新学期が始まったとか、VIPの車列が通るために通行止めになったとか、交通事故、故障、身動きのとれなくなった交差点、異常に長い赤信号など、特別な事情によりさらに悪化している。
2) 質と量
公共交通機関一般にしてもバスにしても、質と量のいずれもが、交通需要と全交通のキャパシティーとのバランスを目標とする市当局が求めるレベルを満たしていない。ほとんどのバス・フェリー・鉄道車両が古く性能も低いことや、空調の使用が限られていることから、自家用車の利用者にとって公共交通は代替となる魅力はない。自動車やオートバイの所有の増加、渋滞によるパラトランジットの拡大とバスの生産性の低下により、公共交通機関はシェアを失っている。
3) 環境基準と汚染
騒音や排気ガスなど交通が人体に悪影響を及ぼしている。自動車の利用の急激な増加は、特にバンコクで大気汚染と騒音を引き起こしている。科学技術環境省(MOSTE)汚染管理部による調査では、1993年から1994年におけるバンコクの主な汚染問題は、自動車の排気ガスが原因の黒煙とCOxである。歩道に設置された18カ所の簡易大気観測所では、バンコクの多くの地区で大気汚染が危険なレベルに達していることを示している。さらに、バンコクの通りは非常に騒々しい。主犯はオートバイ(多くは騒音を大きくするよう改造している)と、メインテナンスの十分でないトラック・バス・オートバイ(トゥクトゥク)などのディーゼル車両である。日中の騒音レベルは夜間より明らかに高い。騒音レベルの測定はバンコクの主要道路付近の多数で行われているが、その多くが70dBA以上であり、長期に渡ると聴覚に障害がでるレベルである。
4) 交通事故
交通事故は増加の一途である。私有財産・公有財産あわせて年間10億バーツ以上の損失があると推定される。これには金額への換算が不可能な障害・死亡などの人的被害は含まれていない。