日本財団 図書館


以上がHCMCエリアにおける都市交通整備に関する一般的な方向性である。マストランジットの全ての路線がHCMCの既存、そして未来の市街地をカバーすることを提案している。

市街地が拡大しているのであるから、主要コリドーエリアとCBDにマストランジットは必要である。将来、郊外エリアで2〜3百万人の人々を受け入れる。しかし郊外エリアの人々も仕事、買い物のため等に、CBDに来なければならない。確かに、交通需要はCBD内だけではなく、同じく主要なコリドーに沿って急激に増加するであろう。これはマストランジットルートのおよそ206km相当になり、建設費はおよそ41億である。マニラ、香港、あるいはシンガポールの経験に基づくと、1キロの鉄道マストランジット幹線は、一日当たり1万人から3万人を運ぶ。206kmの鉄道マストランジット整備で一日当たり、3から4百万人の乗客を輸送することが想定され、その数値は将来のHCMCにおける都市交通需要のおよそ30%となる。206kmの整備に41億の建設費が必要であると概算されているが、我々の計算では十分の予算ではない。100億米ドル必要であろう。

全体のネットワークのうち、種々の調査によって、優先ルートは選定されている。1つは、1997年のドイツの調査であり、もう一つはMVA調査である。いずれにしても、需要のキーエリアは既存のCBDである。既存のヴィエトナム鉄道線路も重要な役割を果たすが、市内のネットワークにうまく統合化されないかぎり、効率的に都市交通需要を満たすことはできない。では、何が阻害要因で何が機会であるのか?マストランジット整備の重要な課題は、土地収用と住民の移転である。特に路線の大部分が既成市街地、特に駅やデポエリアに整備されなければならない。これは非常に大きい社会の問題であり、そのような状況に対処する準備ができていなければならない。2番目の阻害要因は、建設に対してだけでなく、非常に大きな投資コストが発生することである。システムの建設の後にも、資金が必要である。マストランジット整備では、良い資金供給システムの確立が常に困難となる傾向がある。

HCMCには潜在的阻害要因がある。すなわち、オートバイと他の交通モードから公共交通への転換をいかに奨励するかということである。我々が見る限り、オートバイの利便性は高く、オートバイより良いサービスを提供しない限り、人々がオートバイを捨てて、そして次に、その公共交通へ移行させることが非常に困難であると考えられる。これは我々が計画期間内に調査しなければならない問題である。

機会は何であるか?大きな需要はある。需要に関しは、もし我々が良いシステムを確立することができるなら、人々は確かに利用するであろう。テストされた技術も存在する。教授が紹介したように、利用可能な様々な技術が世界中にある。我々はただHCMCに何を当てはめるかに配慮すれば良いのである。

第三の機会は、民間部門が参画可能であるということである。もちろん民間部門はすべてを開発して、そしてすべてを運営することはできないが、もし政府が政府が何をして、民間が何を担うかという、官民の適切な役割分担を提供できれば、世界中の多くの有能な民間会社が整備とシステム運営に参画することができる。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION