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市街地が拡大するにつれ、平均のトリップ長が増加し、目的地までの到着時間が増加するであろう。では、将来の交通需要平均はどの程度であろう。1996年の一日当たりのパーソントリップ数は830万である。ある研究では、20年で2千2百万トリップ(2.6倍)まで増加すると見積もられている。このパーソントリップをPCUトリップに変換すると、パーソントリップでの数値より更に多くなる。道路の実際の渋滞が、交通需要自体よりより速く悪化することを意味する。もし交通需要が3倍になるのであれば、単純には3倍の道路を建設すれば良いのであるが、それは不可能である。

この条件の下、始めにHCMCのための交通開発戦略を一般的に論じる。HCMCは、3つのエリアに分類される。第1は市中心部、第2はコリドーエリア、第3は郊外のエリアである。それぞれのエリアでの道路整備方法、交通管理方法、公共交通整備の方針、交通と土地利用の融合を考慮しなければならない。中心市街地(CBD)での道路拡幅、新規整備は非常に難しい。現状で可能なことは、小規模改良工事や欠如しているリンクの整備のみである。しかしコリドーエリアでは、拡幅や分岐の建設を考慮すべきで、郊外エリアでは多くの道路ネットワーク整備が必要である。

交通管理に関しては、CBDにおける駐車場管理や需要操作のような、より一層の交通管理が必要である。CBDでの自由な自動車利用を制限しなければならい。しかし、コリドー交通に優先順位を設け、どの種の交通手段に優先権を与えられるのか決めるべきであろう。同様に、路傍活動をコントロールしなければならない。規制のない路傍活動のために、道路容量の多くが減少した。郊外エリアでは、通過交通からの分離が必要とされる。都市間の交通流が多くあり、時には、郊外エリアでの環境を破壊する。どうすれば通過交通を域内交通から分離することができるか?

公共交通整備が、交通計画の鍵を握っている。公共交通整備はCBD、コリドー、郊外エリアで重要である。しかし、我々のアプローチは異なっている。CBDでは、鉄道建設のためのスペースは非常に限定されているため、高架もしくは地下のマストランジット施設が必要とされる。CBDでは、需要要求の多様性を伴うため、種々の交通モードを提供しなければならない。しかし、CBDでは、効率を指向しているため、MRTを含め、バスなどを必要としている。そしてバス等の代替交通モードを提供するべきである。しかし交通インフラや施設が供給されていない郊外エリアでは、主要な公共交通ルートヘの良いアクセスを保証して、良いローカルのエリアサービスを供給しなければならない。

もう1つの重要な面は、開発の統合化である。CBDではマストランジットで、一層直接的アクセスを供給するために、商業とオフィス施設との統合を図らなければならない。コリドーエリアでは、鉄道駅周辺の整備を進め、交通結節点での乗換え施設と統合する必要がある。駅周辺の土地利用規制を実施しなければならない。郊外エリアでは、公共交通整備とニュータウンや産業団地開発との統合が可能である。

 

 

 

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