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しかし、調査7カ国の民間航空は、各国とも将来の発展が期待され、また、この地域全体としても大きく発展すると期待されるところである。加えて、東南アジアとヨーロッパを結ぶ幹線航空路上にあり、航空路管制上重要な地域である。新しい航空管制システム(CNS/ATM)時代の到来を目の前にして民間航空の安全運航の観点からも、早急に対応策を講ずる必要がある。

また、各国の訓練について調査したところ、各国とも現在の訓練の実態は不十分であり訓練センターを充実して自国で訓練したいと考えており、そのうえで可能であれば外国からの訓練生も受け入れるという回答であった。各国の経済状況から航空の政策的位置づけは低く、当局者の要望との乖離が見られた。たとえ政策的位置づけが低く、援助要請のプライオリティが低いとしても、5年、10年そして20年という長期的な航空の基本政策があれば当局者の要望が緊急性のあるものとして出されたものと理解できたでしょう。航空基本政策のないままで、このような要望をどのように受けとめてよいのか悩むところである。

The ICAO Training Directoryによれば、この地域にはタイ、インドネシア、シンガポールに訓練センターがある。インドネシアとシンガポールについては、ICAO/UNDPの肝いりで設立されたが、当初の期待どおりには活用されていない。シンガポールのSingapore Aviation Academy(SAA)には通常の航空保安業務訓練のほかにCNS/ATMシステム時代への移行に必要なコースを設けている。調査した国の管制塔で勤務している何人かの管制官はシンガポールで訓練を受けていて、指導的立場で働いていたが、さらに高度の技術習得を希望していた。

地域の管制能力の均一化には高度な訓練と機器類の整備が必要である。それも各国の航空管制官および管制技術官が均一された訓練レベルで訓練を受けることが望ましい。そして、このように訓練は一カ国だけの問題ではなく、この地域全体の航空保安業務向上のために必要である。

調査の結果として、この地域にはCNS/ATMシステム時代に備えて早急に人材育成のための訓練、地上機器の整備が必要と考える。また、各国の共通の問題として、まず財政的な問題があげられる。また、経済政策に比べて優先度が低いからとは考えたくないが、航空マスタープランが確立されていない国が多い。統計的不備、経済発展のなかでの航空の重要性等が考えられていない。単に、財政的援助だけで全てが解決されると考える傾向は残念なことである。調査行程のなかで、現地大使館やJICA現地事務所との会合があった。各国が日本のODAに期待するところ大であるとの共通認識はあった。しかし、現在の日本のODAでは各国別の援助、とくに航空訓練センター充実のための援助は難しいとの見解が強く、地域的に協力して問題の解決を図る方向で検討できないかとの助言をいただいた。そこで、以下のような提案をしたい。

 

1. 地域内広域航空交通管制センターの開設

現在、地域内ではタイのエアロ・タイがカンボジアの航空路管制をしている。将来この管制空域を拡大してユーロコントロールのように、ベトナム、ラオス、カンボジア、タイ、マレーシア、ミャンマー、バングラデシュ等各国の空域を管制する広域管制センターを開設することはCNS/ATMシステムからみて理論上可能であり、有効である。このような大きなプロジェクトは日本政府がこの地域への援助方針として決定し、ICAOとの協力によって可能となる。そのことを視野に入れて各国のターミナル管制、飛行場管制およびそのための訓練センターのあり方を検討することとしてはどうか。

 

 

 

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