よって、避難経路解析については、条約上の要件の主旨を尊重し、内航旅客船にも略同等の要件を課することが妥当であると考える。
前述のSOLAS条約上の規則では、「設計の初期段階で避難経路の解析を実施すること」を要求している。一方、SOLAS条約上の他の規則や国内規則では、一般に、船舶として備えるべき構造、設備、機能を要求している。よって、内航旅客船については、設計の初期段階における解析を要求するよりも、避難経路配置について「一部の経路が使えない場合であっても、旅客、船員及びその他の乗船者が混雑することなく速やかに脱出することができる広さ及び配置のものであること。」を要求すべきであると考える。この考え方では、避難経路解析は、一般配置図/避難(脱出)経路図で表される避難経路配置が、避難性状の観点からみて適切であるか否かを判定するための手段と位置付けられる。こうした一般配置図/避難(脱出)経路図の評価を、以下、「避難経路評価」という。
2.2 避難経路評価の目的
避難経路評価を行う目的は、以下の二つであると言える。
(1) 当該船舶の避難経路上の一定以上の混雑を特定し、排除すること。
(2) 当該船舶の避難経路の柔軟性を確保すること。
2.3 適用範囲
適用範囲については、現時点では充分な審議が困難であり、草案を示すに至っていない。
Note:適用範囲を決定する際に考慮すべき事項としては、以下が挙げられた。
(i) 旅客定員等に代表される避難者数(一般に、)
(ii) 総トン数その他の船舶の大きさの代表値(一般に、小型船には適用を要しないと考えられる。)
(iii) 見通し等に代表される避難経路の複雑さ(一般に、全避難経路が見通せるような単純な避難経路、例えば一つの大部屋のみを有する船には、適用を要しないと考えられる。)
船種について言えば、SOLAS条約ではro-ro旅客船にのみ避難経路解析を要求しているが、これは、「当該規則がro-ro旅客船に関するエキスパートパネルで審議され、SOLAS条約締約国会議で決定された」という規則の成り立ちによるものであり、技術的には適用をro-ro旅客船に限る理由は見あたらない。