ANNEX
内航旅客船用避難経路評価法草案
1 背景
1.1 SOLAS条約第II-2章
国際航海に従事する旅客船においては、SOLAS条約により、総会決議A.757(18)に基づき、階段の幅や踊り場の面積を確保することが従来より義務付けられていた。この総会決議では、当該階段を通過する各階からの避難者の人数を求め、これに適当な係数を掛けることにより当該階段を同時に通過するであろう人数を推定し、この人数に対して一人当たり1cmの幅(最低90cm)を持たせることが要求されている。
エストニア号の事故を契機としてSOLAS条約の見直しが行われた結果、国際航海に従事するro-ro旅客船については、前述の要件に加えて、設計の初期段階で避難経路の解析を実施し、実行可能な限り混雑(congestion)が排除されていること及び充分な柔軟性が確保されていることを示すことが義務付けられた(新SOLAS条約第II-2章第13規則第7.4項)。この規則で要求される解析を統一的に実施するため、IMOは暫定ガイドラインを作成し、このガイドラインについては、現在もIMOで検討されている。
1.2 船舶設備規程
内航船旅客船の避難経路については、船舶設備規程第6章「脱出設備」のうち、第122条の2の2「脱出経路」により、「旅客、船員及びその他の乗船者が混雑することなく速やかに脱出することができる広さ及び配置のものであり、かつ、手すりその他の安全を確保するための設備を有するものであること。」が要求されている。また、同規則の心得により、総会決議A.757(18)相当の方法で階段等の幅を決定することが要求されている。即ち、現行の避難経路に関する規則は、機能要件であるため、避難経路解析要件を導入する場合であっても、基本的には、規則そのものは改正しないことも考えられる。
2 内航旅客船の避難経路解析
2.1 位置付け
内航船にはSOLAS条約上の全ての要件を課す必要はない。しかし、国際航海に従事する船舶の要件を内航船に適用しない場合の主たる理由は、「救助の容易さ」であると考えられるため、救助の前提となる円滑且つ迅速な避難の確保に関する要件は、原則として、内航船にも適用すべきと考えられる。