国際航海船舶の特別要件として、検査心得(n)に記載があり、(3)において、階段の幅は附属書[4]に規定する基準以上であること、となっている。
1994年9月のエストニア号の事故を契機としてSOLAS条約の見直しが行われた結果、国際航海に従事するro-ro旅客船については、前述の要件に加えて、設計の初期段階で避難経路の解析を実施し、実行可能な限り混雑(congestion)が排除されていること及び充分な柔軟性が確保されていることを示すことが義務付けられた(新SOLAS条約第II-2章第第13規則第7.4項)。この規則で要求される解析を統一的に実施するため、IMOは暫定ガイドラインを作成し、このガイドラインについては、現在もIMOで検討されている。
3 避難経路解析の検討
3.1 IMO暫定ガイドライン
3.1.1 IMO暫定ガイドラインの概要
IMOにて発行された「ro-ro旅客船のための簡易的避難解析のための暫定ガイドライン」(以下ガイドラインという)には、総避難時間の計算法、混雑の定義などが示されている。
総避難時間の計算は、「知覚時間:Awareness time (A)」「経路通過時間:Travel time (T)」「搭乗時間:Embarkation time (E)」「浸水時間:Launching time (L)」の4変数からなる次式により示された。
A+T+2/3(E+L)≦60min (1)
(E+L)≦30min (2)
また、混雑状態の定義として、避難の経路又は空間における最大許容人密度を3.5人/m2としている。ガイドラインのAppendixにおいては、人の移動に関する種々のパラメーターと共に経路通過時間の計算方法が示された。
ガイドラインのAppendixでは計算の過程において、経路の実際の幅から人の動作のための隙間を差し引いた実効幅と、人の密度により変化する人の移動速度と流動係数を表にして使用している。
3.1.2 モデルシップの解析
ガイドラインによる避難解析は、国際航海の旅客船を想定していることから防火隔壁で守られた階段室に逃げ込むことを想定した解析法となっている。そのため避難解析は、甲板毎に階段室に逃げ込むまでを一区切りとしている。また、同一甲板においては、同一の経路を用いる避難者毎に1シリーズの計算を行う。
モデルシップは国内ro-ro旅客船であり、避難経路はガイドラインにおける想定と相違し、防火隔壁で囲まれた階段室はない。