しかしながら、その他解析との比較検討を行うことを考慮し、同一経路を使用する避難グループ毎に、避難集合場所までの経路について解析を試みた結果を表3.1.1に示す。
モデルシップの3階船首側の2等寝台室および2等和室は乗客の多いエリアであり、3FG1グループのエリアではそれぞれ、104人の避難グループである。そして、部屋に通じる通路(階段、扉などの代表ノードまで)の面積は25.6m2であり、通路の人の密度は4.06人/m2と計算される。ガイドラインによれば、部屋に接続する通路の人の密度は3.5人/m2を上限としており、混雑状態と判定される。また、同じエリアで、3FG1グループと通路を左右に分けて避難する3FG3グループのエリアでも人の密度は3.86人/m2であり、ガイドラインにおける混雑の上限を超える。
避難経路の混雑は、代表ノード(開口部)への人の流入量と、人の密度(optimum)での流出係数から計算される開口部の有効流出量を比較し、流入のほうが大きければ滞留と判断する。表3.1.1から3FG1グループの4Fへの階段流入部分、3階中央左舷側通路の3FG6グループの甲板への出口、4階船首側の4FG1グループの甲板への出口等が若干の滞留判定となっている。また、5階部分の5FG1+5FG3グループが合流した後の船尾スポーツデッキへの階段で若干の滞留判定となっている。これは、モデルシップの比較解析の関係上、避難の時間差が生じる長い避難経路を、無理やり合流としたために生じており、ガイドラインにおける想定外と考える。
3.1.3 総避難時間
総避難時間の計算は次式で与えられる。
tI=tF+tdeck+tstair (3)
tFは、階段室への入口など代表ノード地点を通過するに必要な合計時間であり、通過人数をその流動係数Fsで除することに与えられる。tdeckは、甲板の最も遠い地点から階段へ移動する経路通過時間であり、具体的には各甲板における避難開始位置から階段までの最長距離とoptimumの通路歩行速度により経路通過時間を算出する。tstairは最上層(又は最下層)の甲板から集合場所に最も近い場所への経路通過時間であり、甲板間の距離とoptimumの階段歩行速度により経路通過時間を算出する。
解析に使用したモデルシップは、階段室に逃げ込むことで避難集合場所へ到達できる配置ではなく、3FG1グループなどは、3階から4階の甲板に上がりそして、再度3階へ下がって集合場所に到達する経路となっておガイドラインによる沿う避難時間の算定の想定とずれがある。tIは、最大値を選ぶことになっているが、とりあえずの計算として、4FG1グループの数値からtIを計算すると、401.7秒となる。
ガイドラインにおいては、さらに安全係数と逆流係数を使用する次式に当てはめて計算を行う。