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3.7.3 双方の崩壊を考えた解析

従来衝突の際の構造破壊によるエネルギー吸収量を推定する式として広く用いられてきたミノルスキーの式は、幾何学的に船首、船側の双方が同じ崩壊長さだけ崩壊するとして評価しており、力の釣り合い等の力学的な評価が行われていない。3.7.1、3.7.2節で述べた手法により、船首、船側それぞれの崩壊量と反力の関係式を求めることができれば、これにより反力が釣り合うように、双方の崩壊量を決定することができる。実際、衝突船の船首の強度と被衝突船の船側の強度が大きく異なる場合、船側と船首の崩壊量は大きく異なり、ミノルスキーの式による推定は精度が低くなると考えられる。

双方の、剛な対象に対する崩壊の貫入量・荷重関係式を利用して、双方の力学的な崩壊挙動を考慮した解析を行うことができる。すなわち、崩壊による変形の、もう片方に与える影響は無視し、双方の反力が常に釣り合っているという条件を考慮すると、それぞれの崩壊量と反力の関係をプロットする。衝突の際、動的な影響を考慮しなければ双方の反力は等しいと考えることができるので、それぞれの崩壊量、反力の関係から、ある反力の時の双方の崩壊量を決定することができる。また、吸収エネルギーは反力を崩壊量で積分したものになる。双方の吸収エネルギーを足しあわせれば、構造崩壊によって吸収されるエネルギーを推定することができる。

 

3.7.4 シリーズ計算

前節で述べた簡易式をベースとして、様々な衝突シナリオに対するシリーズ解析を行い、緩衝型船首構造の有効性を検討する。衝突条件としては、以下のようなケースを考える。表3.6-1に衝突船、被衝突船の満載時、バラスト時の重量を示す。これらがそれぞれに衝突した場合の、衝突船の船首が縦通隔壁に達するまで(この時に被衝突船のタンカーからの油の流出が起こると考える)の総エネルギーと臨界速度を求めた。最終的な結果には、3.5節最後で述べたように、詳細FEM計算との整合性のために修正係数をかけてある。

衝突船:VLCC、Suezmax級、Aframax級タンカー

満載及びバラスト状態

船首形状:扁平型、尖鋭型

船首構造:緩衝型および従来型

被衝突船:VLCC、Suezmax級、Aframax級タンカー(満載のみ)

衝突位置:5/10L、4/10L、3/10L、2/10L、1/10L

 

表3.7.1 衝突船、被衝突船重量

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