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3.3 船首構造強度関連基準

船首特にバルバスバウ構造に作用する水平方向/垂直方向の「平均」荷重については、規則・基準によって特に定義されていない。また、波浪中で作用する船長方向の圧縮力については、実船計測も水槽試験も数値計算も為されていないのが実態である。大型船(種々の船首部形状・防撓様式のバリエーションあり)の豊富な就航実績から、波浪で船首全体構造が圧潰・曲損するなどの事例は殆ど報告されてない為に、特段の規則化ニーズが無かったものと解釈される。即ち、船級協会の定める現行の局部構造規則を満たす寸法であれば、バルバスバウ及び船首上部構造の全体強度は特に問題とはならないものと判断される。本調査研究での緩衝型船首構造の検討に際しては、基本的に現行の船級協会局部構造規則を満たす事を前提条件にする。従って、通常運行状態に於ける船首全体構造強度の検討は不要となる。なお、横肋骨防撓様式の外板は、座屈強度上縦通肋骨防撓様式の場合よりも厚めとなる傾向にあるが、主船体梁としての縦曲げモーメントが零となる船首部位置では両者の板厚要求算式がほぼ一致する。即ち防撓様式によって船殻重量に有意な差が生じ無いので、本調査研究では船首部の形状・防撓様式を選択枝として検討を進める方針とした。

 

3.4 耐衝突防護関連構造強度研究の状況

耐衝突問題特に、エネルギー吸収容量増加と衝突・被衝突物保護に関連する船舶・鉄道・自動車分野の研究事例の調査を行った。耐衝突時防護の実現を構造の「耐力」の強化で正面から図るアプローチは見られず全て、特定の構造材(特に衝突がわの前部構造)の意図的破壊によってエネルギーを吸収すると同時に衝撃力の低下(持続時間延長:緩衝)を狙うアプローチが目立つ。また、最近では被衝突がわの構造強度を考慮して、衝突がわの耐力を制御する(一律に強化或いは柔軟化しない)アプローチも見られる。例えば、構造寸法が小さ目になる小型船の船首構造ではエネルギー吸収容量を強化する為に構造を強化する一方、構造寸法が大き目で被衝突船の船側構造を過大に破壊する可能性の高い大型船の船首構造では柔軟化を指向するなど、メリハリをつけるとの発想である。船舶の現状に関しては、一般的に船側構造強度に比較して衝突船の船首特にバルバスバウの強度の方が高いとの検討結果が報告されているが、被衝突船保護の為に積極的に船首部の強度を調節する/どの程度調節可能か等、具体的な提案にまでは至っていないのが実状である。

 

3.5 FEM衝突解析

標準的な船首構造を有する大型船が標準的なダブルハル(D/H) VLCCに衝突した場合の構造応答と船体挙動とを把握する為のFEM衝突解析及び、緩衝型船首構造に変更した場合の効果を把握する為の比較FEM衝突解析とを実施した。解析で得られたデータは、簡易解析法との照合に利用すると共に設計指針策定に際しての参考ともした。大型衝突船には、肥大低速(船首形状・構造)船の代表としてSuezmaxタンカー(船首形状2種)を、痩せ形高速船首形状・構造)船の代表としては6200TEU級超大型コンテナー船を選択した。

 

 

 

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