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2.4 基準案の策定

試設計移送配管はあくまで油流出低減効果が大きいと考えられる1例であるので、基準案として移送配管自体の仕様を規定するのは好ましくない。即ち、客観的な算式を作り、クライテリアを設定することが必要であると考えられる。

そこで、現在IMOで審議されている油流出解析の確率論的手法を利用することを考える。この手法は基本的にはダブルハルタンカーに対する基準を与えるものであるが、タンク配置による損傷確率が与えられており、座礁の場合にはダブルハル内にそのタンク容量の50%の油が流入する(移送される)という仮定が用いられている。これを応用し、移送配管仕様(配管径、配管長さ、配管高さ)をパラメータとした移送可能油量(移送率)の算式を作り、この手法に当てはめて適切なクライテリアを設定することが、最も妥当な基準案になると考えられる。

また、移送配管に加えて、事故発生時に迅速に移送を実行するために必要な監視・制御装置を検討し基準化する必要がある。

ここでは、移送配管仕様を決めるための基準案と監視・制御設備の基準案を策定する。

 

2.4.1 移送を考慮した確率論的仮想油流出量計算式による基準案

現在IMOで審議されている確率論的仮想油流出量計算法によると仮想油流出量は次式で表される。

OM=(0.40MS+0.60MB)/C (2.4.1)

OMB=(0.70MB(0)+0.30MB(2.5) (2.4.2)

OMSとOMBの計算に移送による油流出低減量を考慮すると、

009-1.gif

ここでCDS(i)、CDB(i)が移送による流出低減量である。

但し、OMB(2.5)は、船底損傷によって座礁した後に、潮位が2.5m下がった状態での仮想油流出量であるが、移送先のタンクに余裕がある限り、潮位の下がった分だけ油が移送され船外に流出しないので、この量はCDB(i)に含めることにする。尚、PS(i)、OS(i)、PB(i)、OB(i)はIMO審議案の現計算法をそのまま用いる。

シングルハルタンカーである3船型について、移送装置がない場合の仮想油流出量の計算結果にIMO審議案におけるダブルハルタンカーのクライテリアと同じ形状の式を当てはめると次式の様になる。

OM≦0.060 for C≦200,000m3

 

 

 

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