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主機採用時には過給機使用域のサージングマージン余裕率、効率曲線をよく確認しグッドマン線図、キャンベルダイアグラム、コンプレッサー羽根車クリープ寿命などの検討を行っておくことが必要である。

タービン側のデポジット付着・汚れによる翼励起振動により破損事故も散見される。デポジットを如何に少なく維持するかが運航ノウハウである。タービン側の汚れは水洗では完全には回復しない。予備ローターやタービンノズルの予備を保有すれば、不稼動期間の短縮が可能であるが、高価なため十分な予備を持っている商船は少ない。

 

1.7 大口径SULZER/MBW/UEC LSII機関受注実績

2000年11月現在の現況を参考までに下の表に記す。「主に大型コンテナ船やVLCCに搭載されている。

 

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RTA84T-B、RTA84T-DはRTA84Tに含める。

 

1.8 舶用DEとシリンダ油

高硫黄MFOの酸中和に使用されるシリンダ油のコストは、機関のロングストローク化と摺動面積が比例して増加し、注油率が平均的に高くなり運航費に占めるシリンダ油のコストは大きく、燃料費の10%程度に達し、運航コストの非常に重要なファクターである。リング・ライナーの擦り合わせ運転を円滑に行い、摩擦率を低く維持することは機関士の重要な仕事であるが、しかし過度に絞ってライナースカフィングを起こしたくないのも機関士の心理であり、注油率を漸減する方策は経験則の域を出るものではない。APモラーはシリンダ油注油率を極端に絞ることで有名な船社である。過去短時間でライナーを変えている。一方過剰なシリンダ注油は生成される硫酸カルシウムで磨耗を促進するという見方もあり、適正な注油率があるはずという考えが出てくる。かってあるエンジンメーカーの設計の総帥は最小油膜が4μmが保持できればスカフィングは発生しないと言明したことがあった。

2000年に入りワルチラNSDはシリンダ油注入率の低減方策として、下記のTriopackと称する過去の諸対策を総合した設計を提言している。国内のDUや三菱神戸は採用している項目である。列挙すると、

1] シリンダライナーのHard Faceの100% deep honing

2] マルチレベル・シリンダー注油(2段注油)

3] top ringのCr系セラミック採用

4] Profile Ring採用

5] Anti Polishing Ring採用

6] Liner中央部断熱(ライナー温度制御)

7] Cooling bore上部のInsulation tube(同上)

8] Readjusted cylinder注油

初採用実機は2000年10月、DUで完成する。5]はパテントが切れたので最近のエンジンはどれも採用している。小生はヤンマーディーゼルNシリーズ機関開発時に採用を強く推奨した事項であった。6]は通称“ハラマキ”と称するもので、DUが考案した。リング・ライナーの損傷を招かずに、シリンダーライナーに温度計を装備して、スカフィングを早期に検知して摺動面を良好に維持することが大切と考える。シリンダ油消費率を低減する管理手法は未だ手探りの状況にある。

 

 

 

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