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不幸に一部シリンダ油種(2社)で油種不適合が原因でライナー異常磨耗が発生した。また耳慣れない起動空気管系の損傷はB船主の見識とNKのクリアな事故原因解析により解決された。一般に事故原因が分れば通常過去の類例もある場合が多く対策は容易である。ライセンシーが違えば使用するコンポーネントの材料、部品メーカーが異なり、生産技術など相違点は相当あるという基本的な認識が暖昧なため、船社の運航関係者や営業部門の理解を得るのは期待しがたい。

MBW機関で数年置きに燃焼解析と就航後の実績評価を十分に行わないで現在は平均有効圧bmepを19barまで出力増を図っているが燃焼室周辺の信頼性のリスクを秘めており船主の不安感は解消しない。

 

1.4 UEC 85 LS II機関における設計変更・改善事例

MHI長崎建造VLCCに搭載されている上記機関の事例をやや詳しく紹介する。

・リング・ライナ信頼性向上対策として

1]FOV噴霧方向変更、2]シリンダライナー内面加工にコルゲート底磨き

・縦振動ダンパーをディチューナ型より高減衰型に、構造はタンデムダンパー化

・架構構造剛性アップ

・台板構造剛性をアップ

・クランク軸→剛性アップ

・始動空気系信頼性向上

1]始動空気主管にラプチャーディスク装備、2]始動空気管制弁連絡管にラプチャーディスク装備

・タイボルト信頼性向上 振れ止め支持個所を1ヶ所より2ヶ所に

・主軸受信頼性向上

1]軸受冠の剛性アップ、2]軸受支持の剛性アップ、3]最適メタル形状採用、4]高疲労強度ホワイトメタルル材質適用

・主機据付を改善し信頼性向上を図る

・(ヤード関連事)〜

1]主軸受高さは#1、2軸受オフセット配置、2]クランクデフは特別管理基準を制定する

 

1.5 主機関の製造コスト低減

エンジンコストは1]内製(内作)、2]購入品、3]加工外注−の3層構造より成り立ち、構成比の大きい加工外注に問題がある。納入する造船所の統合が実現すれば、価格要求が一段と厳しくなることが予想され、収益が不安定なエンジンメーカーは加工外注の選別と集中発注を一層迫られるであろう。生産量が適正規模未達の場合は、同一ライセンスの機関メーカーは共同して加工外注したりして、最小ロットを引き上げる努力も1つの方策となろう。生き残りをかけて加工外注メーカーも工夫を凝らし様々な努力をしているが、中途半端な改善ではドラステックな国際競争の時代に対応できない。機関メーカーは適正操業を維持し、加工外注問題を処理し、低い内製率を上げることは至難なことであろうが、トータルなコスト縮減には避けて通れない問題ではなかろうか。体力のあるうちにディーゼル機関製造の統合を進めることも必要であろう。購入品のメーカーは大企業が多く自動車関連部品や鉄鋼事業の兼営部門であったりして、集約化・寡占化が進行しており、値戻し要請も強まり、従来のように価格安定に協力してくれるとは限らない。

日本がDE機関ライセンサーに支払っているライセンス料が年間約60億円と莫大であり、日本で設計変更された事項も相当あるが契約条件は現在も不平等である。過去ライセンサーを買収するチャンスはあったが、重工業メーカーのトップにM&Aを進言する発想は経営陣にはなかったことが現状を招いている、如何ともしがたい状況がある。

 

1.6 過給機

過給機は内燃機関の出力率アップの進歩に多大な貢献をしてきた。主要なメーカーはABB、三菱、MAN型の3社がある。三菱METは高い信頼性が認識され国内、韓国マーケットを含めそのシェアを伸している。

ABB(TSU)は最近TPL型過給機を開発したが、漸く三菱MET-SEレベルの技術水準に達した。過給機損傷は整備復旧時の組み立てミスが発生しやすい機種では整備時に特別の注意が必要であるが、共振回転数域での長時間運転による翼損傷など、メーカーが十分船主に注意喚起せずに発生した事例もある。

 

 

 

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