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学会としてもユーザビリティプロフェッショナルアソシエーション(UPA)というものがあるが、そこで扱われている問題は、前述のユーザビリティ工学の範囲を超え、売れるもの、ユーザに使ってもらえるものを提供するためにどうしたらいいか、という問題であり、それらを方法論、組織論、運用論などの立場から論じている。したがって、本論でも、以後はこの意味でユーザビリティという概念を使っていくことにする。

 

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図5 システム受容性の概念構造(狭義のユーザビリティは実用的受容性の下に位置づけられ、ユーティリティと並列であるが、ISO 13407では、その上位概念の使い勝手の意味で使われている)

 

3. ISO 13407の動向

ユーザビリティという概念は、人間にとって適切なものづくりをしていこうという考え方につながる。人々の生活や業務に適合した製品をつくれば、そして人々がそれを利用するようになれば、人々の生活の質(Quality of Life)を向上させることができるだろう、というわけである。

こうした考え方は、従来からヨーロッパ、特に北欧では一般的なものであり、人間中心(Human Centered)という実践運動も活発に行われていた。また、参加型デザイン(participatorydesign)というアプローチも普及していた。これは、機器やシステムを開発し、あるいは組織に導入する際に、それを実際に利用する人々がそのあり方を議論し、どのようなものにすればありがたみが増すのかということをエンジニアやデザイナなどと共同作業の形で進めてゆくやり方である。こうした動きによって、特に北欧の人々は、家庭や仕事場における生活の質の向上を考えてゆこうとしてきたわけである。

このような思想的背景がある中に、情報機器が登場してきた。情報機器というと、その典型的なものはパソコンなどのコンピュータであるが、それだけでなく、マイクロコンピュータのチップは、ステレオやビデオやテレビのようなAV機器、多機能電話や携帯電話のような通信機器、電子レンジや洗濯機などの家電機器、銀行のATMや駅の券売機のような公共機器、腕時計やPDAなどの小型機器、自家用車やオートバイなどの車両などの形で日常生活の中に入り込んでいるし、また、血液分析装置などの医療機器、ICチップを基盤に据え付けるマウンターなどの産業機器、戦車や戦闘機などの軍用機器、原子力プラントや水道局の監視制御システムなどの大型システムなどの形で特殊な場面でも活用されている。

 

 

 

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