このシステムは、随時、自由に利用できるようにするのが好ましいが、キーの受け渡しや降船時の車両操作上でのトラブルの発生を未然に防止するために、例えば、登録制度を設けて、ドライバーレスの利用区間や、受け渡し相手等を予め登録させ、利用時にその都度必要事項を明確に確認できるようにすると共に、ドライバーレス車の船内配置を予め決めておき(例えば、一般車の後または特定の列に配列させる等)、乗船時には、適切な指示または誘導をおこなうような対応処置が必要とされよう。
機動性の高いトラックを対象としたこのようなドライバーレス航送は、IT革命下で育ちつつある物流のアウトソーシングやサードパーティロジスティクス等の新しいサービス業の参入によって、充分実現可能であろう。このような新しいシステムを利用することにより、ドライバーを酷使することなく、アイドルタイムを発生させずに、トラックの運用効率を格段に向上させることができる。
なお、「超高速ビジネスフェリー」にもこのシステムを同様に適用して、その利用価値をより一層向上させることができるであろう。
5. 拠点港の開発
「高速海上ルート」の拠点港には、高能率な車両乗降設備(後述する)を設けて従来よりも車両乗降能力を格段に向上させなければならない。また、ラッシュ時にも、多数の車両を支障なく拠点港にアクセスさせることができる周囲条件も求められる。従って、特に、「幹線ルート」を結ぶ東西の両地区には、新しい拠点港を開設する必要があり、その候補地として、例えば、関東地区では木更津市、関西地区では泉南市を挙げたい。
木更津市は東京湾横断道路により東京、横浜から至便であり、かつ、湾外に近いため湾内の過密を回避することができ、また、泉南市は関西空港に臨む「りんくうタウン」として海岸が整備されており阪神高速湾岸線および阪和自動車道と連絡がとれ、いずれも立地条件がきわめて良好である。しかも、両地区共に今後の活性化を図るための具体策が強く求められており、新しい拠点港の候補地としてまさに好適であろう。
その新しい拠点港では、待ち時間なしで乗船できるような配慮を施し、また、電算化やOA化により機能化された乗船券売り場や事務室、待合室、店舗等を含む建屋の他は、必要最小限の駐車場を設けるのみとし、車両へのまたは車両からの荷貨物の移載作業は一切おこなわせず、荷貨物や車両を滞留させることなく、時間価値を無駄にしない機能的な車両処理体制を整えるのが望ましい。
なお、新型高速双胴水中翼船(HTH)の喫水がやや深いため、各拠点港では、浮体工法を積極的に導入して必要な水深を確保すればよいが、関東地区では、東京湾横断道路の中間点(海ほたる)に拠点港を設けるのも一案であろう。また、浦賀水道の速度制限を避けるためには、例えば、房総半島南岸(館山、勝浦等)や三浦半島等に拠点港を設けることについても検討されるべきであろう。
6. 新型高速双胴水中翼船(HTH)
6.1 計画仕様および想定条件
普通車を航送の対象とする「超高速ビジネスフェリー」と、トラックを航送の対象とする「超高速ROROフェリー」について、開発目標を明確にするために、Table 1に示すような計画仕様および想定条件を設定したい。
6.2 基本的な概念
その共通の船型は、高速化したSWATHの両没水体間に複数列の全没型水中翼を架設し、その両没水体内に電動機を直列に配列して二重反転式螺旋推進器と直結に連結する電気推進方式の新型高速双胴水中翼船(Hydrofoil Twin Hull)とし、これをHTHと略称する。