ところで、高速道路での走行は、狭い車室内で緊張する上に単調でもあり精神的な疲労度が高く、長距離運転では、2、3時間毎に休憩を必要とし、案外、非能率な面がある。また、長距離になる程、交通集中や事故、道路工事等により所要時間が不確定になりやすく、過密な走行状態では安全性が危倶される。そして、雨天や降雪時等には、滑りやすく危険度もさらに高くなり、速度も規制されることが多い。
このようなことから、運転にかなりの自信や経験のある人でも、高速道路の長距離運転だけは何とか省略できる方法はないものかと思うことが、少なからず、あるはずである。特に、多忙な人にとっては、運転中は、簡単な書類の作成はおろか書類に目を通すこともできず、また、綿密な連絡や、充分な仕事の打ち合わせをすることもできないため、時間価値の消失に対する不満には切実なものがある。
従って、高速道路と対抗できる低廉な運賃で定時運航が可能な高い利便性と安全性を兼ね備えた「超高速ビジネスフェリー」に対するニーズは、殊の他多いものと判断される。
2] 「超高速ROROフェリー」に対するニーズ
今日では、急成長した宅急便に見られるように、輸送ニーズは多様化し、かつ、細分化されており、また、言うまでもなく、輸送の対象となる物品は、それぞれ異なる商品価値を有し、時間価値や物流コスト負担力もをれぞれ異なり、集荷や出荷の時間帯も異なる一方において、オンタイムサービスの要請は、今後ますます顕著になるであろうことは疑う余地もない。
国全体の効率が問われる折から、このような多種多様な輸送ニーズにきめ細かに能率よくダイナミックに対処できる体制を整えてこそ、細部にわたる新陳代謝が促進され、経済の活性化が達成されるのであり、従って、まず、利便性の高いトラックそのものの運用効率を顕著に向上させるための対策こそが求められるべきであろう。
そのためには、遠距離航路や迂回対応ルートだけでなく、主要幹線道と並行してトラックを高速海上輸送できるモータリゼーションにマッチした高能率な輸送モードの実現が求められる。その新しい輸送モードでは、域際時間の短縮化に支障となるヘッドレストレーラーを航送の対象から外し、機動性の高いトラック(ヘッド付きトレーラーは含む)を航送の対象とする新しいコンセプトの「超高速ROROフェリー」を採用し、車両乗降時間を大幅に短縮しなければならない。
近時は、物流のアウトソーシングやサードパーティロジスティクス(3PL)等の新しいサービス業が注目されつつあることから、トータルでの所要時間を主要幹線道を往来するトラックと同程度もしくはそれ以下に短縮することができれば、機動性の高いトラックを有利に用いた高能率なドライバーレスの運用計画の立案が充分可能と考えられる。
4. 「キー・チェック・システム(仮称)」によるドライバーレス航送
今日、幹線物流では、夜間のトラック便が主体となっているため、各工場や配送センターでは、集荷や出荷の時間を夜間便に合わせて調整しているのが現状であろう。しかし、時間価値を考慮した場合には、集荷後直ちに出荷できるようなフレキシビリティのある(選択肢のある)輸送体制が望まれるのは言うまでもない。
そのためには、昼間においても、主要幹線道等と対応する「海上ルート」での能率の高いトラック便の設定ができなければならない。また、ドライバーレスが可能であることも望まれる。特に、「超高速ROROフェリー」では、今回提案する「キー・チェック・システム」を採用することにより、このような要求に充分に応えることができる。
その「キー・チェック・システム」は、車両(ヘッドレストレーラーを除く)を乗船させた後、キーを、船内で一時的に預かって、車両を積み込んだドライバーを下船させる一方、目的地では、受け取り側のドライバーを、船の到着時間に間に合うように待機させておき、到着後に、そのキーを、直ちに、受け取り側のドライバーに手渡して、車両を引き渡すようにするのである。