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この限界を決める要因には、つぎの項目が対象となる。

イ 港湾条件−貨物を積卸する港湾の水深や荷役設備(コンテナクレーン等)

ロ 航路条件−海峡や運河などの通航制限による吃水、船幅、船長(パナマ運河、スエズ運河、マラッカ海峡やロンボツク海峡等)

ハ 主推進機関−その時期に製造できる主推進機関の最高出力(1軸か2軸)

二 造船所の建造設備能力−巨大船を建造できる建造ドックや生産技術など

ホ 輸送コスト、すなわち、船価、燃料費、船員費、店費などの貨物輸送に関連した費用(運航コスト)

 

(4) 過去における船舶の大型化の推移

世界の産業の発展と海上荷動きの増大に伴い、タンカー、バルカー、コンテナ船などの産業用資源の輸送を主体に輸送するインダストリアル・キャリアーは、輸送量の増大により、1970年代から、世界的に船腹量の増大と共に船型の大型化が促進された。

(タンカー)

1970年代におけるタンカー大型化の時代には、主推進機関(ディーゼル或いは、タービン)の製造可能な最大出力の関係から、主機関1基、1軸推進器方式の200〜280千DWT型タンカーが中東と日本間の原油輸送には、一般的であった。しかし、さらに大型化が進み、開発された300千DWT型以上の超大型タンカーは、当時2基の主機関による2軸推進器方式が採用され、船価が割高となり、貨物1トン当たりの輸送コストは、大幅に増加した。したがって、中東と日本間の航路としては、水深の関係でマラッカ海峡を通航できないため、ロンボック海峡経由喜入への輸送に、当時ULCCとしての300千DWT型が就航した。しかし、一般的には中東より日本間のマラッカ海峡経由の航路での最適船型は最大280千DWT型となり、大水深の港湾開発を必要としない280千DWTの船型が、日本では、もっとも多く採用され運航されている。

しかし、最近、世界的に新造船として発注されるVLCCは、200〜280千DWT型以上に、300千DWTの隻数が非常に多いが、全て2重船殻構造であり、一軸で船幅が比較的広く、喫水がマラッカ海峡の通航にも問題ない船型のため、現在のVLCCの主流になりつつある。

(バルカーやその他)

バルカーや客船特にクルージング船の大型化を含め、各種船舶は輸送量の増大とともに、1980年代に船舶の大型化が促進され、特に世界の造船所の建造設備能力の増大が大型タンカーの建造を可能としたことに加えて主推進機関の大出力の推進機関の製造可能が、船舶の大型化を一層促進している。

現在の最大船型は、タンカで約550.O千DWT型、バルカーでは、約270千DWT型、クルージング船では約140千GT型で各船種とも近年、大型化の傾向がある。

 

3. コンテナ船の船腹量や船型の推移

1990年代から始まったコンテナ船の大型化に関し、過去の推移を振り返り、船腹量や竣工量など船型に関連した問題点などを検討することによって、今後の大型化について展望する。

(1) コンテナ船の船腹量と建造量の推移

イ 船腹量の構成変化

100GT以上の商船を対象としたロイズ統計によれば、コンテナ船の保有船腹量は1970年に、197隻、約1.91百万GTであったが、1999年末には、2,457隻、約55.26百万GTに増加し、過去29年間の伸び率は、年平均約12%であった。そして、1990年代の10年間で見ると、未だ年平均11%の著しい伸びで増加している。

次に、100TEU以上のコンテナ船を対象としたClarkson Researchの統計によれば、世界のコンテナ船の船腹量は、1980年の649隻、約615千TEUから、1990年には、約1,643千TEUへ増大し、1999年には、2,533隻、約4,167TEUへ9年間に年平均約11%の伸びで増加している。

 

 

 

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