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SR242 原油タンカーの新形コロジョン挙動の研究(継続)

 

本研究は、オイルタンカーの原油タンクの系統的な腐食データベースの構築および腐食の原因とメカニズムの解明、さらにはそれらに基づいた適切な防食対策の検討を行うことを目的として、平成11年度から3ヶ年計画で実施している。

研究初年度にあたる平成11年度の主な研究実施概要を以下に紹介する。

(1) 腐食メカニズムの仮説の構築および検討

就航中の36隻の原油タンカーについての腐食事例アンケートを回収し整理した。また、過去に計測された58隻のVLCCの板厚データを整理し、衰耗の時系列的変化について考察した。さらに、腐食に関する文献を渉猟しその要点を整理すると共に、類似構造物としての海上・陸上の貯油タンクの腐食事例についても情報収集を行った。

これらの調査研究の結果および後述の(2)、(3)項の研究成果に基づき、主に“上甲板裏付近の所謂Vapr Space”と“タンク底板およびその類似構造”の腐食の支配因子について考察し、腐食メカニズムの仮説についての検討を実施した。

(2) 実船における腐食実態の把握

Double Hull 2隻、Single Hull 1隻、合計3隻のVLCCについて腐食実態の調査を実施し、タンク内の腐食概観調査結果を整理した。この調査時に採取した腐食生成物および構造部材からの切出し材の分析を行った。また一部の船については上甲板の板厚衰耗量の計測、およびタンク底板の孔食の深さと分布の測定を実施した。

重要な腐食環境因子についてのデータ収集として、就航中の実船からのイナートガスの採取・分析、および原油タンク内等の温度の計測も実施した。

 

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上甲板裏の腐食状況の例(VLCC)

 

(3) 実船試験および実験室試験による腐食メカニズムの検討

就航中の実船での試験として、製作したサンプル材を実船の原油タンク内に取付け、所定の期間放置した後回収して腐食生成物、衰耗量、孔食深さ等の分析・測定を行えるようにした。その一部については既に回収・分析も実施した。また、原油タンク内での腐食モニタリングを実施するためのセンサー及び計測システムの検討・開発を行った。

 

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原油タンク底部の孔食の例(VLCC)

 

腐食環境因子の影響の評価を目的とした実験室試験を実施するために、本年度は、試験方法を確立するための調査、および標準条件下での予備試験を行った。

以上の成果を基に次年度は、本年度の調査の継続と本格的な実験室試験および実船での腐食モニタリングを実施し、腐食メカニズム仮説の深化と防食対策についての検討を行う予定である。

 

 

 

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