最大衰耗状態とは、各構造部材が船級協会(ここではNK)が規定するおのおのの局部衰耗限界まで同時に衰耗した極端な状態を考えている。大まかに言えば、上甲板や船底外板などの板厚は25%減、縦通材部材では約30%の減に相当し、フランジ面積では26〜27%減に相当する。さらに、中問衰耗状態とは、これらの衰耗の1/2を仮定した状態である。
図2に示すように、崩壊強度は、衰耗量に対してほぼ線形的に減少する。また、最大衰耗状態では、(設計)許容静水中曲げモーメントと寿命中遭遇するであろう最大波浪曲げモーメントの和に対して、85%から114%を示している。一番低い水平線が最大波浪縦曲げモーメントである。中段の水平線は標準的な積み付け状態における最大作用縦曲げモーメントである。
上段の水平線は(設計)許容静水中曲げモーメントを想定したときの最大作用モーメントを示す。41KDWTタンカーでは、標準的積み付け状態が最大モーメントを与えている。崩壊強度と作用モーメントを比べると、乱暴に言えば、最大衰耗状態では、Sagging状態におけるSuezmax級で強度が15%程度不足になり、Hogging状態にある他のタイプでは多少余裕があることを意味している。中問衰耗状態では、作用モーメントに対し112%ないしは137%程度の崩壊強度が有ることがわかる。
なお、新造時では、134%から162%の崩壊強度を有している。ただし、実際の標準的積み付け状態を考えると、静水中曲げモーメントはSuezmax級やVLCCでは(設計)許容静水中モーメントよりも小さいことが通常であり、このことを考慮すると、強度の余裕は増すが、ここでは許容静水中モーメントが、許容したからには船体に作用する可能性があると考えることにする。
他の計算結果を含めて考えると次のことが言える。新造時のタンカーの主船体縦曲げ最終強度に対する安全率は概ねHogging状態で1.5から2.0になる。Sagging状態では、1.3から1.6になる。中問衰耗状態で主船体縦曲げ最終強度に対する安全率は概ねHogging状態で1.2から1.7になる。