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これを機に、オーストラリアの造船業界は、国際市場向けの軽量な、アルミ製高速船及び豪華モーターヨット等を中心としたものに大きく変化していった。この間、補助金は段階的に下げられ、現在では製造コストの3%となっている。

 

オーストラリア造船業界の主な変化をまとめると:

・ 船種:1970年代には多種の鋼製船舶(大型船を含む)を建造していたが、現在ではアルミ製高速船及び豪華モーターヨット等、特定市場向け船舶が主流になってきている。今日のオーストラリア造船業は「軽量」船舶が中心である。

・ 市場:かつてのオーストラリア造船業界は国内市場向け、とくに軍需用の船舶が多かったが、1980年代にそれまで国内向け造船のみが対象となっていた多額の補助金が輸出向け造船にも適用され、輸出向け軽量船舶の生産が大幅に伸びた。現在、補助金率は大幅に下がったが、船舶生産高の90パーセント以上が輸出されている。

・ 企業:かつての主な造船所は殆ど姿を消したか、もしくは補助金の交付の対象外となっている。今日補助金が交付される造船所12社のうち、1970年代及び1980年代初期に活躍していたのは1社のみである。

 

このように、オーストラリアでは、軽量の高速船業界が急速に成長し、市場シェアのトップを占めている。2000年には、世界市場の26%(42隻中11隻)がオーストラリア製であった。オーストラリアの軽量高速船は国際的にも競争力が高く、設計力とアルミニウムを利用した建造技術は高い評価を受けるようになった。こうしたことから、オーストラリアの造船業界の船舶建造に占める輸出の割合が大幅に増えている。産業科学資源省(Dept of Industry, Science and Resources)が、補助金交付対象の造船所に関して実施している調査“Survy of Registerted Shipbuilders 1998/1999”(2年に1回実施、1998/1999年版が最新)によると、1998/99年度に完成された船舶は26隻、金額で3億8,700万豪ドル1となっており、そのうち86%が輸出向けである。1987/88年度は、輸出が占める割合は約38%であったので、輸出の割合が大幅に伸びていることがわかる。図3-3、3-4に示すように、1991/92年度から、輸出向け船舶の建造は金額ベース、隻数ベースともに国内向け船舶の建造を上回るようになった。輸出の伸びは主に軽量高速船の輸出増によるものである。

 

1 Survey of Registered Shipbuildersにおける金額は、船舶建造コストベースとなっている。

 

 

 

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