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一方国際関係では、99年9月、インドネシアからの独立を巡って騒乱状態となった東チモールに国連多国籍軍の主力として軍部隊を派遣。「アジアの安保問題に積極的に関与する」とする外交政策“ハワードドクトリン”が東南アジア各国からの反感を買った。しかし関係改善にむけて、2000年12月には、インドネシア開発地域(AIDA)閣僚会議がキャンベラで行われ、8日夜、豪州・ダウナ外相とインドネシア・シハブ外相の共同署名による「共同閣僚宣言」が発表された。

 

1-3 経済

 

91年以降、経済はプラス成長を維持している。94年前半をピークに一時減速したものの、堅調な個人消費と設備投資でアジア経済危機の被害も軽微に止まった。99/00年度(99年7月〜2000年6月)の経済成長率は4.4%となっている。しかし、ここへきて景気減退が顕著になっている。2000年7-9月期の実質GDP成長率は前期比0.6%、前年同期比4.2%と、市場の予想値をやや下回る結果となっている。これは、内需の落ち込みが大きかったが、輸出は順調に伸びている。その理由としては、1]記録的な豪ドル安による輸出価格競争力の向上、2]主要輸出先であるアジア諸国や米国経済の需要増、3]輸出の6割以上を占める一次産品の商品市況の相対的な好況、があげられる。オーストラリア政府は、経済減速の影響は小さくとどまり、2000/2001年度も引き続き4%台の経済成長を達成できるとの見通しを発表しているが、米国経済成長の鈍化、その影響によるアジア諸国の景気落ち込みが予想されるため、金融機関のアナリストはこれを疑問視している。

また、政府は2000年7月、財・サービス税(GST)10%導入と法人・所得減税を柱とする税制改革を実施したが、GSTの影響は、予想通り各マクロ指標に大きな影響を与えている。中でも最も大きな影響を受けたのは消費者物価指数(CPI)で、第3四半期は前年同期比6.1%(前期比3.7%)の上昇となっている。これには、国際原油価格の高騰による市中ガソリン価格の上昇も理由としてあげられる。オーストラリア統計局(ABS)は、11月30日に、「GSTの影響を除いた」CPIを発表したが、それによると前期比3.7%であったものが1.4%に低下するという。

また、失業率は景気の拡大と労働市場の改革が項を奏し、2000年1月に、90年8月以来初めて7.0%を下回った。

なお、その他の産業政策としては、97年6月、2000年までの自動車政策を発表した。輸入関税を当初2004年に5%に引き下げる予定であったが、国内業界の反発から2000年に15%、2004年まで据え置き、2005年に10%へと緩和された。

金利政策では、準銀は、物価の上昇及び豪ドル下落への警戒から99年11月、2000年2月、4月に続き、再度2000年5月に政策金利を0.25%引き上げ、6.00%とした。その後2000年8月2日、準銀は、政策金利を0.25%引き上げ、6.25%に戻している。99年11月以降5度目の引き上げで、利上げ幅は合計1.25%。第2四半期(4〜6月)のCPIは前年同期比3.2%上昇し準銀の目標水準2.5%を上回り、7月の失業率は6.3%と10年振りの低水準となるなど、準銀はインフレ警戒感を強めている。また、前述のように豪ドル安が続いている2000年9月以降、豪ドルは10月下旬に初めて1豪ドル=O.52米ドルを割り込み、史上最安値圏での値動きとなっている。

 

 

 

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