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● 政府の老朽船スクラップ政策:インドネシア政府は1984年に、30年以上の老朽船は1984年5月1日にスクラップ処分、25年以上のちのは1985年1月にスクラップ処分にすることと決めた。政府はカラカジャヤ国内船近代化計画*で、老朽船の交換を試みたが、資金調達難もあり、需要のすべてを満たすことはできなかった。国際輸送労働者連盟(International Transport Workers Federation)のインドネシア担当報道官Hanafi Rustandi氏によると、この政策によりインドネシアの海運業界は大きな打撃を受け、多くのインドネシアの船会社が倒産に陥った。政策施行前には、273あったインドネシア籍船は、103まで激減した。3

● 規制緩和による外資参入:1987-88年の規制緩和により、国際貨物が外国企業に開放されたが、当時、インドネシアの海運企業は、貨物のコンテナ化に取り組みはじめたばかりだった。加えて老朽船のスクラップと代替船の調達にも取り組まなければならなかった。そこへ、外国企業の参入により競争が激化し、運賃が低下。すでにコンテナの設備を有していた外資海運会社がシェアを伸ばしていった。

● 船舶ファイナンス:インドネシアの銀行は、船舶ファイナンスに対する知識が乏しく、また不動産などの利回りのいい案件に融資を優先させた。また、外資の銀行は、船舶建造の納期が遅れるケースが多かったため、徐々に船舶購入への融資をしなくなった。また、インドネシア国内の金利は高く、資金調達は容易ではなかった。

● 付加価値税(VAT)**:船舶(新船、中古船を問わず)や部品の購入、修繕などに10%の付加価値税が課せられた。

● インドネシアの船舶クルーの所得税は一律25%に設定されている。近隣のシンガポールやマレーシアは、船舶クルーには所得税が加算されておらず、インドネシアの船主は経験のあるクルーを引き止めるために、通常所得税は会社負担にしている。

註:

* カラカジャヤ国内船近代化計画:政府が資金援助をして船舶を建造し、海運会社に船をリースするプロジェクト。20年間のリース後、海運会社が船を買い取るオプションがある。

** VATは、1999年に廃止された。

 

また、INSAは旧スハルト政権下で、政府管轄の貨物(米、小麦など国営企業が輸入を独占していたものなど)は、入札を行っても、必ず決まった業者に発注されており、普通の(スハルト政権とコネクションのない)海運業者には出る幕がなかったことも、海運業界が発展しなかった1つの要因である4、という。

国営造船所のPT Dok & Perkapalan Kodja Bahari の Irnanda Laksamawan部長によると、インドネシアの海運業が10年後に輸出入量の10%を取り扱うようになるためには、商船を現在より168万DWT増やして、428万DWTにしなければならないと試算している。これによると、2万4,000DWTの船24隻、3万6,000DWTの船30隻が必要で、6億5,600万ドルの投資を要するという5

 

3 Lloyd's List International 1999年8月10日掲載

4 Lloyd's List International 1998年6月19日付け

5 Lloyd's List International 2000年1月26日付け

 

 

 

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