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また、EPAが規制していない農場用タンク等の小型タンクは、数量的にはガソリンスタンドのタンク数よりも多く、これ等からのガソリンの漏れも問題である。さらに、地下水や湖等の地上水は、ガソリン給油時の直接漏れによっても汚染される。

レクリエーション用ボートは、汚染の程度は必ずしも多くはないが、MTBEを撒き散らしながら走っており、カリフォルニア州レークタホー、サンパブロ、コマンチェ等の取水湖では、地域法により基準に達しない2ストロークSIガソリンエンジン駆動のボートの乗入れを禁止している。

 

NMMAは、ガソリン中のMTBEの使用を減らすというEPAの方針、即ち水域の環境を汚染してまで大気をクリーンにするための方策はとらないという方針を全面的に支持し、MTBEに代わるものを使用することを会員に指導している。NMMAはまた、1998モデル年からEPAのHC規制を受けて生産されたエンジンからのMTBE排出量は、それ以前のエンジンの排出量よりもずっと少ないことを確認している。

 

上記のように、人々はMTBEの危険性について早くから気が付いていたが、決定的被害証拠が得られぬまま1990年のCAAAを境として、MTBEの使用量はうなぎ上りに増大した。

現在に至るまで、MTBEの人間の健康に対する調査をした連邦レベルの研究はない。飲料水に含まれるMTBEの影響を述べたカリフォルニア州の研究では、飲料水中のMTBEにより発ガンした動物実験の例に触れている。

1999年3月現在、MTBEは19州の32地区で使用されている。1999年3月の“飲料水中のMTBEに対する公衆健康のゴール”と題する小冊子によれば、MTBEは1994年化学製品の生産量としては18番目、1995年には12番目、1997年には2番目の45億トンとなっている。この量は、前述のごとく酸化剤全使用量の85%に相当するが、MTBE産業とも称すべき巨大産業となっており、EPAも簡単にMTBEを禁止することができない状況となっている。EPAは、ガソリン中のMTBE量を減らす方向で種々対策を立てているが、巨大化したMTBE産業には苦労している。

 

2000年6月、米国内のガソリン価格が異状に高騰し、特にシカゴやミルウオーキーでは6月12日1ガロン当たりレギュラーガソリンが$2.04となり、他地区に比し40セントも高くなり連邦政府が調査に乗り出した。石油業界はよりクリーンな酸化剤の使用を要求するEPAの方針、つまりMTBEをやめ、エタノールを使用するためのコスト高と説明したが、EPAは調査の結果エタノール化してもせいぜい6セントの上昇と反論し、結論を得ないまま7月以降ガソリン価格は下落している。うがった見方をすれば、禁止されそうなMTBE保護のための価格操作と考えられなくもなく、利益を追求する不可解な石油業界の内部構造の複雑さを見せつける結果となった。

 

 

 

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