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1997年、EPAは“飲料水に含まれるMTBEの許容値及び健康に与える影響”についての指針を発表し、20-40ppbが臭いと味の限界値であることを示した。この値は、この時点までに健康上問題を生ずるとして発表されたいずれの値よりもずっと低く、単なるガイダンスであり何等の強制力も持っていない。例えば、カリフォルニア州グレンビルでは20,000ppbの値を示す井戸があり、EPAの示したガイダンス値の1,000倍となっている。州レベルのガイドラインは各州で出されているが、10ppb (メリーランド州)から240ppb (ミシガン州)の間に分布している。多くの州は20ppbから70ppbの間である。

 

1998年、EPAはブルーリボンパネルに、MTBEが水域の環境を劣化している程度の調査を指示した。1999年パネルは報告書を発表し、これ以上MTBEを使用し続けても更に大気をクリーンにする効果はないと発表し、MTBEの継続使用により更に地下水及び地上水が汚染されることの懸念を指摘した。結論として、パネルはできるだけ早い機会に大気をクリーンとする利得を減らさない範囲で、MTBEの使用を極力減らすか使用を禁止するよう勧告している。さらに、パネル報告書は地下水のMTBEによる汚染の大部分は、地下ガソリンタンクからの漏れであると指摘している。

EPAは、パネル報告書に基づき、議会がMTBEを禁止する法案を出すよう議会に求めたが、議会は未だ何等のアクションも起こしていないどころか飲料水のMTBE検査を実施すべしというような法案すら出していない。

 

MTBEに関する訴訟は意外と少ないが、2000年8月、南ニュージャージー州の住民94人は連合して、ここ数年間住民に吐き気、頭痛、目眩の症状が多発しているのは飲料水中に含まれる地下ガソリンタンクから漏れたMTBEが原因であるとして、この地域のガソリンスタンドを経営するCumberland Farm及びガソリンの供給元であるシェブロン及びガルフォイルを相手どって訴訟を起こしている。南ニュージャージー州で売られているガソリン中のMTBE要求量は、1995年以来11ボリューム%であるが、北ニュージャージー州ではずっと15%であり、1999年にやっとEPAは11%とすることを認可している。

 

州環境局は、Cumberland Farmに付近の井戸200の水質検査を命じたが、そのうち8つの井戸から州の基準を上回るMTBEが検出された。1999年5月、郡保健当局は付近の住民に井戸水を飲料水として使用することを禁止したため、Farmはこれ等住民に飲料水ボトルを配り、水道に切り替えた住民にはその費用を支払った。また1999年7月、Farmは古いガソリンタンクと366トンの汚染土壌を撤去しているが、MTBEの使用禁止を求めて州及び連邦政府の責任を追及する環境団体の支援を受けた本訴訟の行方が注目される。

 

 

 

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