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4-4 MTBEの規制

 

CAAAは、CO値がNAAQSの基準を超す31都市地域での酸化剤混入燃料の強制使用と、その他のCO問題地域での任意使用を定めている。前述のごとく、冬期これらの地域で売られるガソリンは2.7重量%の酸素を含んでいなければならないが、エタノールは揮発性が強いため、現在酸化剤として使用されているのはMTBEが85%でエタノールは8%に過ぎない。

EPAは、2.7%の酸素を含んだガソリンを使用することによって7-15%のCO減少が期待できることをテストによって確認し、かつ、1992年OFPの実施によって大気中のCOを平均8%減少させることができたと報告しているが、OFPの効果については幾つかのただし書きがついている。

 

ただし書きの第1は、酸化剤混入ガソリンの排出テストで摂氏零下6.6度(華氏20度)以下で行われたものはほとんどなく、米国の多くの都市で冬期華氏20度以下に下がる日が多いことを考えると、実際のCO減少をEPAのテスト結果から判断するのには無理がある。さらに、別の大気実測では、OFP地区でCO値が上昇したり非OFP地区でCO値が下がったりと、OFPと関係ない結果を示している場合がある。

ただし書きの第2は、酸化剤を混入した燃料が他の汚染物質、特にNOxを増加する働きを持っているとの報告があることである。

 

ただし書きのうちで問題が一番大きいのは、MTBEを酸化剤として混入したガソリンの燃焼に基づく大気中のHAPsの増加、地中のガソリンタンクからのガソリンの漏れによる地下水の汚染である。

前者については、OFPの実施によりホルムアルデヒドが26%、ベンゼン及び1,3ブタジエンが8%増加したとする研究がある。後者については、MTBEが使われ始めた当初は地下水の汚染率も少なく、余り問題にならなかったが、ガソリンよりも水に溶けやすいMTBEが飲料水の取水源となる湖や地下水を汚染して、住民の健康に被害を及ぼしていることが次第に明らかになり、現在米国で大きな社会問題になっている。一度水に溶けたMTBEは、なかなか膜や活性炭では分離しにくいが、沸点が摂氏55.2度であるため、水を温めればMTBEは空気中に放散される(付録5)。

 

1970年代終りから、MTBEはガソリンのオクタン価を上げるために、プレミアムガソリンに少量使われ始めていた。1980年には、早くもニュージャージー州のある都市の水道水が、MTBEで96ppb (parts per billion)汚染されていることが報告されている。下って1996年、カリフォルニア州サンタモニカのある地区の井戸の70%がMTBEに汚染され、付近にガソリン漏れのある20のガソリンスタンドが在ることが判明し、その後49州でMTBEが検出され、使用中止となる公共取水源が続出した。EPAは、地中のガソリンタンク漏れに対する対策は早くから実施しており、1998年までに地下タンクの新替えやアップグレードを求めていたが、約20%、400,000のタンクがEPAの指示に従っていない。

 

 

 

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