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水を直接注入する方法は、エマルジョン燃料に比し、はるかに優れた方法といえる。この方法は、燃料注入ノズルと別に水注入ノズルを設け、燃焼時に大量の水を注入する方法で、エマルジョン法に比し格段のNOx減少(50-60%)が期待される。

水注入のタイミングと注入時間の調節により、最大のNOx減少が得られる。本方法の成功の決め手となるのは、燃料インジェクターと水インジェクターを備え、電子的に両インジェクターの作動を制御する複合バルブの設計である。このバルブには、水が過剰に注入されたり、水漏れ、排ガス温度のバランスの乱れ等に備えた緊急水遮断機能を組み込む必要がある(第4-4図)。水直接注入法は、どの燃料でも使用可能である。エンジン変更における初期投資については、次の項で述べるが、SCR法の30%といわれその割にNOx減の性能が良いので多くの船に使われている。

 

NOx減少技術の決め手は、選択接触還元法(Selective Catalytic Reduction: SCR)である。

SCRはエンジンそのものをいじるのではなく、エンジンの排気ガス中のNOxをアンモニアあるいは尿素と反応させ排出するもので、90-95%のNOx減少が可能であるがコストが高いという難点がある。SCRの初期投資は、80-100ドル/kW、オペレーションコストは1-1.5ドル/MWhと見積られている。

SCRは、燃料の種類に左右されない安定した性能を示す優れた技術であるが、幾つかの技術的問題点が指摘されている。

まず、中速エンジンの排ガス温度は高いので、ターボチャージャー(T/C)タービンの後にSCRを装備する必要がある。T/Cタービンの前にSCRを配置しても良いが、この場合幾つかの欠点を克服しなければならない。排ガス温度が高すぎると、SCR中の触媒は焼結して寿命が短くなるのである。この欠点を補おうとして、大量の触媒を投入するとエンジンへの負荷が大きくなり、舶用エンジンとしては好ましくなくなる。また、T/Cタービンの前にSCRを置くと、SCR中のアンモニアや触媒の埃でT/Cタービンが損傷の危険にさらされる。

T/Cタービン後にSCRを一体化させた設計では、T/Cタービンからの排ガス温度が低いので、SCRに入る前に排ガスをバーナーで熱する必要がある。さらに、SCRがT/Cタービンの背圧を高めるため、タービンの熱効率を下げる欠点を持っている。

SCRのサイズは、入ってくるNOxレベルに左右される。最近のエンジンはNOxレベルが低いので、サイレンサーとSCRを一体化したコンパクトでコスト効果が高く、しかも、最も厳しいNOx規制値にも適用可能な設計を可能にしている(第4-5図)。

 

上記のほか、エンジンの微調整や排ガスの再循環によってもNOxの減少は可能である。エンジンの微調整とは、エンジンの主要構成部分、即ち燃料噴射システム、空気吹き込みシステム、燃焼室等の設計を変更することである。

 

 

 

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