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4-2 ディーゼルエンジンのNOx減少技術

 

ディーゼルエンジンは、他機関に比してHC、CO、PMの排出は少なく、熱効率が良いのでCO2、SOxも少ない。現在の大型舶用ディーゼルエンジンの熱効率は、50%になんなんとしている。

したがって、ディーゼルエンジンで問題となるのはNOxの排出のみであり、近年のディーゼルエンジン製造業界の開発目標は高い熱効率を維持しながら、かつ、NOx排出の少ないエンジンの開発である。これらの開発は成功しており、燃料消費量はそのままで世界中で最も厳しいNOx規制に合格するエンジンが生産されるようになっている(付録3)。

 

ディーゼルエンジンの排気中のNOx生成には、2つのソースがある。1つは燃焼空気中のN2が圧縮高温発火時に酸化する熱酸化窒素(Thermal NOx)、もう一つは燃料中のN2が酸化する燃料酸化窒素(Fuel NOx)である。そのうち、大部分が熱酸化窒素であり、燃料酸化窒素は全体の10-20%に過ぎない。

熱酸化窒素の生成は、反応するN2とO2の集中度、反応温度、滞留時間が関係する。実際のNOx生成プロセスは多くの因子に左右され非常に複雑な過程の結果であるが、要は温度が高ければ高い程、滞留時間が長ければ長い程、NOxの排出量が多くなるということである。逆にいうと、燃焼室のピークの温度を下げ、ピークの持続時間を短くすることが、NOx減少技術の決め手となる。

現在、ディーゼルエンジン業界で最も広く利用されているNOx減少の基本的手法は、燃料の噴射時期を遅らせ、燃料注入圧を高め、同時に燃料消費量を増やさない手段として圧縮比を高める手法である。また、これ等の燃料の注入条件を電子的に制御する方法が一般的になっており、さらに、燃料条件に耐えるようカムシャフト等のエンジンの構造設計も変更されている(第4-3図)。このような方法で、NOxを30-50%減らすことが可能である。

 

燃焼行程に水を注入することによっても、NOxを減らすことが可能である。水の注入によりNOxの生成にかかわるO2の部分圧が減り、さらに、水の蒸発に必要なエネルギーにより熱負荷が減るため、NOxの生成が抑えられる。

水の注入方法には、2つある。1つは燃料と水をエマルジョン化する方法、もう一つは水を直接注入する方法である。

前者には欠点があり、蒸留燃料と水のエマルジョン化が不安定なので、SOx排出規制地域で蒸留燃料を使う必要のある地域ではこの方法をそのまま使えず、燃料インジェクターを高速噴射に適したものに設計変更する必要があるが、その場合エマルジョン燃料を使わない場合の性能が落ちる。エマルジョン燃料を使用した場合のNOx減少は20%である。

 

 

 

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