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高速道路用エンジンは、このような設計変更にさらに加えて電子燃料注入、触媒技術等により驚異的な低排ガスエンジンを可能にしており、舶用エンジンもその種類に最も適した技術で改良する必要がある。

排ガスの再循環は、排ガスの一部を吸気マニホールドに戻すものである。これによって、燃焼温度が低下しNOxを20-50%減らすことができる。しかし、排ガス再循環システムの舶用エンジンへの適用は、燃料の品質が問題となり簡単ではない。つまり、燃焼ガスからの硫黄及び煤がピストンリング、バルブその他部品の摩耗を増大させるのである。したがって、排ガス再循環システムは、より清浄な蒸留燃料エンジンへの適用が対象となる。

 

米国の非道路用ディーゼルエンジンの代表的メーカーは、キャタピラー(CAT)である。CATは建設、鉱山用等の産業機械と共に、トラック、船舶、機関車、発電用のディーゼルエンジンを製造している総合機械メーカーである。CATは、自社の高速エンジンに電子制御モジュール(ECM)と称するマイクロプロセッサー装置を装備し、エンジンに埋め込まれたセンサーからの情報を解析し燃料注入のタイミングと持続時間を調整し、燃料効率を最適化すると共に排気を減少させる技術を完成し、シリンダー数8、12、16及び出力範囲1,000刧2,000bhp、回転数1,600刧1,800rpmの3,500シリーズBエンジンを舶用として売り出している。3,500シリーズBは、ECMの効果を上げるためにカムシャフトを大きくしたり、冷却システムを改良する等機械部分の設計も変更されている。

 

1995年、CATはドイツのCLEANコンソーシアムの一員であるKrupp Makを買収し、中速エンジン分野に進出すると共にMakが持っていた排ガス技術を手に入れた。Makは1995年始めにM25型エンジンを発表したが、その設計は高圧縮比、集中注入、注入タイミングの最適化、高点火圧力等を採用し、既にMARPOL 73/78附属書VIの基準を満たしたものであったが、Makは更に厳しいNOx 50%減の基準発効に備えてエンジン設計の変更、水注入システム、SCRシステム採用のための研究を行っていた矢先である。

 

デトロイトディーゼル(DDC)やカミンズも、CATと同じようなECMを組み込んだ舶用高速ディーゼルエンジンを発売しているほか、ヨーロッパのエンジンメーカーとの共同開発によって中速エンジンやクリーンエンジンへの参入を果たしている。

1994年9月、DDCはMTUと協同してヘビーデューティー・ディーゼルエンジンの2つのシリーズ(2000シリーズと4000シリーズ)を開発すると発表した。2000シリーズは、世界で最も厳しい排出基準を持つドイツのメルセデスベンツのシリーズ5000エンジンの舶用化であり、本開発によりDDCが習得した技術効果は大きい。

一方のカミンズは、フィンランドのヴァルチラと2つのシリーズ(6,000-7,500hp、3,600-6,000hp)の天然ガス混焼高速ディーゼルエンジンの開発、設計、製造に関する50/50のジョイントベンチャーを作り、1995年から売り出している。

 

 

 

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