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米国の燃料電池推進船プロジェクトは、1993年USCG、MARAD、海軍、EPA、NOAA (National Oceanic and Atomospheric Administration)及びエネルギー省(Department of Energy: DOE)間でMOU (Memorandum of Understanding)が結ばれたことに始まる。このプロジェクトの最初の主目的は、政府手持船の排ガス対策であったので、IMOとの接点となっているUSCGがプロジェクトのまとめ役に選ばれた。

このプロジェクトチームは、討論を重ねるうちに燃料電池船が唯一の現実的なクリーン船であり、米政府として政府手持ち船の排ガス対策として燃料電池船を開発し、実用化を急ぐべしとの結論に達した。燃料電池はディーゼルエンジンよりも50%燃料効率が良いので、その投資回収は最小の時間で可能と考えられた。その結果、1994年9月21日EPAの環境技術イニシアティブ(Environmental Techinology Initiative: ETI)の中に燃料電池推進船開発プログラムが取り込まれた。

本プログラムは、政府機関、産業界が一体となって、政府手持ちのディーゼル電動推進T-AGOS(海軍海洋観測船)を15百万ドルの予算でクリーンな燃料電池船に改造しようとするプログラムである。第4-1図に本プロジェクトにおける燃料電池の原理と排気(蒸気、N2、CO2)、第4-2図に燃料電池推進T-AGOSの配置図を示す。

 

燃料を変えて排気を減らす方法は、主としてガソリンエンジンを対象としたものであるが、大きく分けて3つの方法に分けられる。第1は排ガス量の多いガソリンに代えてクリーンな代替燃料(Alternative Fuel)を使用する方法であり、第2はガソリンの一部を燃焼促進剤(酸化剤)と置き換えた置換燃料(Replacement Fuel)を使う方法である。第3は燃料の処方を根本的に変えて、改質燃料(Reformulated Fuel)とすることである。

第4-1表は、1992年から98年の間の運輸部門における代替、置換及びそれ以外のガソリン燃料の使用量の年次変化を示したものである。1992年、石油は運輸部門で使われる燃料の98%を占めていた。1992年から98年の間代替及び置換燃料の使用量は2倍となっているが、ガソリン全体の使用量はこの期間10%伸びたに過ぎない。ただし、このガソリンの10%の伸び(11.3bilガロン)は、運輸部門以外も含め1998年国内で使用された全代替燃料(4.3bilガロン)の2倍強に相当している。天然ガスやエタノールといった代替燃料はほとんど自動車用であり、船舶での利用は緒についたばかりである。例えば、圧縮天然ガス(Compressed Natural Gas: CNG)の客船への使用はUSCGにより禁止されていたが、最近USCGの燃料安全規則を満たすCNG燃料貯蔵、供給、モニタリング及び警報システムが開発され、エリザベス川のフェリーボートに搭載されることが予定されている。

 

1990年のCAAAは大気浄化のための幾つかの施策を示しているが、ガソリン燃料に関し、2つのプログラムを発足させている。

 

 

 

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