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米国製エンジンの一番重要な輸出先はヨーロッパであり、米国規則公布に際しEC規則との厳しさの比較が問題となったが、EC統一規則の討議は米国規則発効後である。1997年7月の環大西洋通商会議では、本問題のEC及びEPAの専門家が出席し、ECの排出基準の第1次ドラフトが討議された。この会議は通商上の希望を言い合う会議で、EPAがEC規則を米国の基準と同一にするために圧力をかける会議ではないが、EPAは米国内で米国基準で作った製品がそのままヨーロッパで売れるための方策をECの立法者と話し合って理解を求めている。

 

舶用ディーゼルエンジンの場合は、世界マーケットの状況は若干異なっている。商船用として利用されている低速及び中速舶用ディーゼルエンジンの47%(馬力ベースで52%)はドイツ国内あるいはドイツメーカーからの技術供与の下でドイツ以外で作られている。米国製舶用エンジンは、GMが中速のEDMエンジンを作っている以外は、全て陸上のトラック用エンジンを舶用に改造した高速ディーゼルエンジンである。最近、米国のキャタピラー、デトロイト、カミンズ等の舶用高速ディーゼルエンジンメーカーもヨーロッパのメーカーと組み、あるいは会社を買収して中速エンジンの品揃えを進めている。

 

上記のような状況の中、ドイツはディーゼルエンジンの環境技術開発には早くから積極的で、官民合同の技術開発コンソーシアムCLEAN (Clean and Low Soot Engine with Advanced Technology for NOx Reduction)を発足させ、ドイツ政府は3千万DMを支出している(ML Sept.'96)。CLEANへの参加機関は、第3-6表に示す13機関で、取りまとめの中心はGermanischer Lloydである。この13機関以外にも、大学、研究所、製造会社等が契約ベースで多数参加している。

国の場合は、舶用ディーゼルエンジン各社が陸上トラックで舶用よりはるかに先行して環境技術と取り組んできたので、ドイツのようなコンソーシアムは結成されていない。

 

CLEANプロジェクトの目標は、取り敢えずMARPOL 73/78附属書VIのNOx排出基準を満たし、かつ、効率と性能を落とさない技術を完成し、その後段階的に附属書VIより厳しい基準を要求する国あるいは地域向けの技術を完成することであった。

第3-3図は、CLEANの目標を示した図である。まず、エンジンの設計変更でNox50%減を達成し、それ以上は触媒技術(後述)により95%減にまでもっていこうとするものであるが、NOx減のために燃料性能を落とすことなく同時にSoot (ばい煙)も減らすという厳しい目標設定となっている。

CLEAN成立当時、ディーゼルエンジンからのCO2は充分減少していたが、更に減少させることも目標の中に加えられた。附属書VIの基準(第3-3図影の部分)は、1992年当時既に達成されていたエンジンも実在したが、CLEANプロジェクトの最終目標であるNOx減少値を燃費を落とさずに達成することは容易なことではなく、“ディーゼルエンジンのジレンマ(Diesel Dilemma)”と呼ばれている。

 

 

 

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