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これと併行して、上記CAAAに基づきカリフォルニア州もSIPを1994年11月に公布した。

EPAは、FIPの役割を各地域がSIPを公布するまでの触媒のようなものだと考えており、SIPがEPAに提出され、承認されれば、その地域はSIPにより規制されるのでFIPの一部あるいは全部をその地域に対し不適用とする方針とした。現在では、全米各州のEPAの承認済みSIPが40CFR Part52に記載されており、各州及び各地域が問題とすべきHAPsとその具体的規制法が詳述されている。

 

FIPの作成に当たり、FIPに影響される地域の住民達にはワークショップ、グループ討議、公聴会等に積極的に参加するよう奨励され、EPAもここで得られた住民の声をFIPに反映するよう努力した。EPAは、FIPが適用される地域で集会を開きEPAの提案内容を説明し、その後特定の問題について討論集会を開いた。EPAは住民の声を反映する従来の方法、すなわちNPRMを出し書面でコメントを求め公聴会にかける方法よりも、一歩踏み込んだ方法をとったといえる。

州及び地域がEPAとほとんど同時に基準(SIP)作りを進めていたので、EPAは住民の声の集積に州と地域の協力を求めた。このようにして何回も公聴会にかけ、最終公聴会後30日を経てFIPを発効させることとした。

 

その後の舶用エンジンからの排ガス規則は、全てEPAとエンジンメーカーの協力の基に作成されたものである。特に、前節で述べた舶用2ストロークガソリンSIエンジン排出規則の制定は、NPRMの発行から最終規則まで2年近くにわたり上記FIPと同じ手法で産業界の声を取り入れ、助けを借りて、マーケットの要求を充分理解して生産上のフレキシビリティー(ABT)を与え、技術的コスト的に無理なくコスト効果の高いポイント(HC75%減)での基準が作られた。

当然のことながら、本基準は公布された時点で産業界に歓迎された基準であった。メーカーに最も喜ばれたのは、本基準の適用に当たり多くの技術的オプション、すなわち4ストローク、燃料直接注入、触媒コンバータといった技術をメーカーの事情に合わせて自由に選び、前述のABTによるクレジット処理で無理なく生産ラインにのせられることである。

 

一口にOB/PWCエンジンといっても、米国内販売マーケットはOBエンジンが圧倒的に大きい。1999年の販売統計によれば、OBエンジン331,900台、PWC106,000台となっている。OBエンジンは日本のヤマハ(17%)やスズキ、ヤンマーが少量輸入販売している以外は、全てブラウンズヴィック、OMC等の米国製品であり米国の重要な輸出商品である。

したがって、エンジンの排出基準とその発効時期については、世界市場を混乱に陥れない方策が必要であり、上記メーカーに対する配慮と同じ程度の配慮が必要と考えられた。

 

 

 

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