以上、EPAはABTにより業界全体で規制値以下になれば良いという考えであり、各メーカーは余分の技術投資で得たクレジットを金と同じように取引きあるいは預金の対象にできるというユニークな規則となっている。
上記のOB/PWC用エンジン以外のエンジンに関しては、前節で述べたように、2000年11月17日のANPRMにおいてSD/Iエンジン及び港湾で使用されるフォークリフト等に用いられる産業用大型SIエンジンの排ガス規制に関し、EPAの基本的考え方を示している。SD/Iエンジンの燃料はほとんどガソリンであり、産業用大型SIエンジンの燃料は大部分が液化天然ガス(LPG)、次にガソリンが続き、天然ガス(LNG)は未だ一般的ではないが少量使用されている。
SD/Iガソリンエンジンにつき、EPAは現在、電子燃料注入、排ガス再循環、触媒の各技術により得られる排ガス減少値を評価中である。EPAは、触媒技術についてのデータをあまり持ち合わせていないので、大型、高効率触媒を用いた場合のHC+NOx排出量についてのコメントを求めている。
また、電子燃料注入と排ガス再循環を併用した場合は、HC+NOxの規制値は9-10g/kW・hrが適切と考え、併せてCOの上限規制値130g/kW・hrを規定することも考えているようである。適用年度については、2005年あるいは2006年からということでコメントを求めている。ガソリンエンジンの場合、蒸発により大気が汚染されない対策が必要であるが、EPAは自動車に使用されているキャニスターを使用頻度の少ないSD/Iエンジンに使用することは不適切と考えており、低圧リリーフバルブ、膀胱型燃料タンク、ガソリンの蒸気が透過しない燃料パイプ等の技術及びコストについてもコメントを求めている。
産業用大型SIエンジンのカテゴリーでは、19kW以上のほとんど全ての非道路用SIエンジンが規制対象となる。フォークリフト、ポンプ、発電機等のほか、舶用補機SIエンジンも含まれる。EPAは、大型産業用SIエンジンの規制値を短期的規制値及び長期的規制値の2段構えで提案し、コメントを求めている。
短期的規制値の要点は、下記のとおりである。
* カリフォルニア州CARBが2001年より実施する規制値を踏襲した値、すなわちNMHC+NOx: 4g/kW・hr、CO: 50g/kW・hr
* NM (Non-Methane) HC+NOxを規制(メタンの測定が必要)
* 2004モデル年からの適用(カリフォルニアと同じ)
* 規制値作成のために基準となった技術: 電子燃料注入及び触媒法
* Duty Cycle: ISO C2(変速エンジン)、ISO D2(定速エンジン)