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以上、最終規則は主としてNOx+HC、PM、COの排出を規制しているが、HCについては非メタンHCよりもむしろTHC(Total Hydro Carbon)を問題としている。メタンはオゾン生成に関連して他のHCよりも極度に反応性が小さいので、有機排ガスは時に“非メタンHC”と表現されるが、ディーゼルエンジンの場合はメタンはTHCの2%を数えるにすぎない。また、HCはNOx+HCの全量の5%以下であり、メタンが表現上表に現れにくい少量であるのがTHCとした理由である。

 

また、本最終規則はスモークに関する規制を盛り込んでいない。これは、現在既にスモーク対策を盛り込んでいるというメーカーの証言に基づくものである。スモークを規制している港湾は既にたくさんあり、また、船舶運航者もスモークで船体が汚れるのを嫌がるので、多くのエンジンは運転前に水を通すというような簡単なスモーク対策がとられている。さらに、今回の最終規則でPMが規制され、スモーク対策にプラスとなるので、EPAは特にスモーク規制を盛り込む必要はないと考えている。

 

さらに、最終規則はディーゼルエンジンの検査について細かく規定しており、従来船級協会に任されてきた舶用ディーゼルエンジンの歴史を変える規則となっている。

カテゴリー1のエンジンは陸上非道路用エンジンの検査規定(40CFR Part89)、カテゴリー2のエンジンは機関車用エンジンの検査規定(40CFR Part92)を夫々若干変更した検査規定となっている。米国では、大部分の舶用ディーゼルエンジンは陸上用ディーゼルエンジンメーカーが製造しているので、陸上規則を援用することは種々の面で都合が良く合理的である。

 

例えば、エンジンファミリーの定義は、カテゴリー1で燃料注入が機械的か電気的かを記すことにした以外は全て陸上規則と同じである。PLT (Production刧Line Test)は、最初に認証されたエンジンと生産段階のエンジンが同じ排気性能を持っているかどうかを調べるためのテストであるが、舶用エンジンの場合は生産量が少ないので、カテゴリー1では生産量の1%のエンジンに対し、カテゴリー2では最低年1度のPLTを実施すべきことを規定している。

最終規則はまた、メーカーに生産上のフレキシビリティーを与える排気性能のクレジットのABT(Averaging, Banking, Trading)プログラムを採用しているが、これも陸上エンジンと同じである。

 

陸上用エンジンの検査規定より変更された最大のポイントは、各種エンジン/プロペラの組み合わせに対し検査時の速度/負荷サイクル(Duty Cycle)が第3-4表に示すように変更されたことで、これによりあるエンジンのNOx排出量は第3-4表に示す4点、5点あるいは8点の加重平均として求められることとなった。

 

 

 

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