日本財団 図書館


3. 舶用エンジンからの排ガスの規制

 

3-1 MARPOL 73/78附属書VI

 

1997年9月、過去6年の研究成果として、MARPOL 73/78に附属書VI“船舶からの大気汚染の防止”を加える条約改正が採択された。附属書VIは、その合計船腹がGTベースで世界商船隊の50%となる15か国が批准して12か月後に発効することが定められているが、今のところその数に達せず未発効である。2002年12月31日までにこの条件が満たされなかった場合には、IMOの海洋環境保護委員会(Marine Environmental Protection Committee: MEPC)が附属書VIの発効を妨げている障害の究明に当たるとの議定書を採択している。

ただし、規制対象が2000年1月以降の新造船に搭載される新エンジン等とされていることもあり、世界の造船所、エンジンメーカーは附属書VIの基準をクリアーすることを第1目標に対策を進めており、未発効ではあるが事実上動き出している国際規則である。このことは、米国においても例外ではなく、EPAは当面国際航路に従事する米国籍船に対し特別な規制を設けず、附属書VIの基準に従うよう求めている。

 

船舶の海洋汚染防止のための国際条約(International Convention for the Prevention of Pollution from Ships)は、1967年英国沿岸において発生したトリーキャニオン号の座礁による油流失事故を契機に、船舶による海洋汚染を防止するための国際条約の必要性が認識され、まず1973年IMO総会で採択されたが、技術的に未解決の問題を残しており、発効のメドがたたないままタンカー事故が続いたため、所要の修正を施した上、1978年“1973年の船舶による汚染防止のための国際条約に関する1978年の議定書(1978 Protocol for 1973 International Convention for the Prevention of Pollution from Ships: MARPOL 73/78)”が採択された。本条約は、本体に加え規制対象別に6つの附属書により構成されており、附属書Iは油による汚染、附属書II-Vにおいてそれぞれ有害液体物質、有害物質、汚水、廃物による汚染の防止を取り扱っている。附属書VIは、前述のとおり、97年9月に採択された改正により、追加された。

 

附属書VIの構成は、3章からなる本文と多くの付録から成り立っている。第1章(一般(General))では、附属書VIの適用範囲を海上の人命救助、船舶の安全のためやむを得ざる排出及び全ての予防措置を講じた後の、あるいは予期せざる結果の船舶の損傷に基づく排出を適用除外とする以外は、全船舶に適用されることを明示している。第2章(検査、認証、規制手段(Survey, Certification and Means of Control))では、船舶の検査、認証証書の発行、規制の強制手段について記されている。第3章(船舶からの排出規制(Requirements for Control of Emission from Ships))では、船舶からの排出について、オゾン破壊物質、NOx、SOx、VOCに関し、具体的排出規制が記述されているほか、船舶に搭載される焼却炉、港湾での受入施設、燃料の質、海洋石油開発用のドリリングリグやプラットフォームに対する要求等が記載されている。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION