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さて、クルーズ船の話は比較的新しい問題である。2000年初頭、EPAはアラスカ航路に就航するクルーズ船会社6社に所属する13隻が、1999年アラスカ航路の排ガス基準(Marine Vessel Visible Emission Standard)に違反しているとして違反通知を出した。北西クルーズ船協会では、この基準が同協会がモニタープログラムの一環として環境性能レベルを高く保つために集めたデータを基に作成された基準であるとして、反発を強めている。

これとは別に、アラスカ氷河等の環境敏感地区に乗り入れるクルーズ船からの排ガスが環境団体の攻撃の的となったため、クルーズ船協会はアラスカ環境保護局の援助の下1999年クルーズ船からの排ガスに関する環境問題解決のため幾つかのワーキンググループを作り、その中で客観的データを基にした新基準作りを進めている。さらに、別のワーキンググループでは、クルーズ船からの排ガスで甚大な影響を受けるような場所のNOx、SOx、PMをモニターすることを決定している。

このような状況の中、EPAは前述の違反通知を出したわけであるが、EPAはクルーズ船の煙突から大量の煙が出ているとの多くの市民やメデイアからの苦情に応えたものであるとしている。

 

フェリーボートの問題も、比較的新しい問題である。橋やトンネルの増設に比べて、フェリーボートの増便や新しいルートの設定は容易でフレキシビリティに富んでいるので、現在米国ではフェリーボートの増設ブームが続いている。特に、サンフランシスコ湾やニューヨーク近郊では需要が大きい。フェリーボートは乗客、貨物の大量輸送機関としての利点を有しているが、SOx、NOx、PMといった排ガスを大量に排出する欠点を有している。特に、フェリーボートの場合は比較的限定された地域で定期的に排ガスが排出されるので問題は簡単ではない。

 

1997年7月、サンフランシスコの環境団体Bluewater Networkはフェリーボートからの排ガスが環境に重大な影響を及ぼしているとの報告書を出したが、これに対して運輸省海事局(Maritime Administration: MARAD)と米国造船造機学会(Society of Naval Architects and Marine Engineers)が反応し、フェリーボートと他輸送機関の比較検討を行なったが、結果はBluewater Networkのそれと同じく新しい排ガス技術を取り入れていないフェリーボートのディーゼルエンジンからの排ガスは人・マイルべースで道路用エンジンの6-10倍の排出量であると警告している。

ただし、フェリーボートが後述の新技術を採用したディーゼルエンジンを使用すれば、人・マイルベースで考えると道路上の大量輸送機関より排出量が減るとも述べている。

 

 

 

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