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現在、米国で天然ガスを使用したクリーンなエンジンをフェリーボートに利用するプロジェクトが、エネルギー省とガス研究所(Gas Research Institute)の協力で進められている。

 

21世紀のための交通整備法(Transportation Equity Act for the 21st Century: TEA-21)は、フェリーボートに関する2つのプログラムに対して資金援助を与えている。1つはフェリーボート及びフェリーターミナルに対するフェリーボート任意プログラム(Ferry Boat Discretionary Program: FBDP)、もう一つは混雑緩和及び大気浄化プログラム(Congestion Mitigation and Air Quality Improvement Program: CMAQ)である。CMAQの適用は、フェリーボートに限定されていない。CMAQは最初1991年ISTEA (Intermodal Surface Transportation Equity Act)で始められTEA-21に統合されたものであるが、管理は運輸省のFHWA(Federal Highway Administration)とFTA (Federal Transit Administrartion)の共同管理である。

CMAQの連邦出資分は80-90%で、1999-2003年毎年約14億ドルの支出が約束されている。CMAQの基金は、大気の状態と人口数を加味した法定公式に基づいて各州に配分される。CMAQの基金は、NA地域の大気浄化プロジェクトに重点的に配分されるので、一般的に中から大規模のメトロポリタン地域が対象となる。また、各プロジェクトは州や地域全体の交通計画に組み込まれなければならないとの条件が付いているので、フェリーボート計画は基金を受けやすくなっている。

 

さて、ディーゼルエンジンに比べると、ガソリンエンジンを主体とするレクリエーション用ボートに対する取り組みは比較的早かった。といっても、1990年のCAAAで非道路用エンジンに対する立法権がEPAに与えられる以前は、事実上野放しの状態であった。米国は、何といってもプレジャーボート大国である。1999年の米国ボート製造業者協会(National Marine Manufacturers Assiociation: NMMA)の統計によれば、米国のボート総数は16,833,900隻であり、この数は世界のボート総数の7割に近い数である。

EPAは、CAAAの指示に基づき非道路用エンジンからの排ガスを調査し、夏季都市部では全ての発生源からの炭化水素(HC)の10%は非道路用エンジンからのものであり、そのうちの30%はレクリエーション用ボートのガソリンエンジンから排出されるものであるとの結論に達した。

前述のごとく、地表オゾンの元凶はNOx、SOx、VOCであるが、HCはVOCの一種であり、レクリエーション用ボートエンジンからのHCを規制すべきことが確認された。さらに、上記HCの大部分がOB/PWCの2ストロークSIガソリンエンジンから排出されていることが判明し、EPAは早急にこれらエンジンに対する規則を公布することとした。本件については3-3節で詳述する。

 

 

 

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