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2-2 船舶による大気汚染の事例

 

米国で舶用エンジンの排ガスによる大気汚染と関連してこの10年来話題となってきたのは、南カリフォルニア沿岸地域での一般船舶に対する規制であるが、最近クルーズ船、フェリーボート等の環境敏感地域での操業が問題となっている。また、米国は1,700万隻のレクリエーション用ボートを所有するプレジャーボート大国であり、レクリエーション用ボートからの排ガス規則は重要事項として処理されてきた。

 

EPAは、南カリフォルニア沿岸地域を対オゾンNAに指定し、期限付きでその地域に見合う州の具体案(State Implementation Plan: SIP)を作成し、NAAQSを達成するよう要求した。南カリフォルニア沿岸地域では、船舶からの大気汚染を減らさなければNAAQSを達成し得ないことが判明したが、いずれにせよ2010年までにNAAQSの達成を義務づけられた。

このため、カリフォルニア州は1994年対オゾンSIPを作成、1996年EPAから承認されている。本SIPにおいて、カリフォルニア州は2010年までに船舶からのNOx排出を9トン/日減らすことを宣言しているが、その後南カリフォルニアを訪れる船舶が増大したため、1997年改正版を出しこの値を15トン/日に引き上げている。この量は、非道路発生源からの目標全体削減量の14%に達する量であり、少なくとも南カリフォルニア沿岸地域では舶用エンジンからの排ガスが環境と住民の健康に重要な影響を持っていることを示す数字である。

 

NOxを減らすために特定のエンジン設計を強制することは、カリフォルニア州当局の権限外であるので、NAAQSの目標達成にはいろいろな方法を組み合わせることになる。1996年3月、EPAはカリフォルニア州に対し産業界、環境団体、州及び地方自治体を網羅したコンサルタントグループを作り、目標を達成するよう指示している。この結果作成されたカリフォルニアSIPでは、NOx減少の手段として下記5つの方法を組み合わせている。

* 国際航路船に対するMARPOL 73/78附属書VIの適用

* 国内船に対するEPA排出規則の適用(1994NPRM)

* 南カリフォルニア沿岸地域での減速

* 南カリフォルニア沿岸地域での航路離岸

* 種々のNOx減少エンジン設計技術の適用

* 港湾活動(荷役、トラック、鉄道等)に伴う排ガスの減少

 

参考資料6の研究結果(第2-2表)によれば、9トン/日のNOx減少を達成するための内分けは国際航路船に附属書VIを適用することによる主機からの減少分 1.1トン/日、補機からの減少分 1.2トン/日、港内船及び漁船に対しEPA規則を適用することによる減少分 0.8トン/日に対し、船会社が営業上最も嫌う“減速”がシナリオにより1.2-5.9トン/日と非常に効果的な結果となっているのは皮肉である。

 

 

 

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