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EPAは、最初のNAAQS公布後、数千の健康症例を研究し、1997年7月地表レベルオゾン及びPM-10の改正NAAQSを公布し規制を強めた(Ozone 62 FR38652, July 18, 1997) (PM-10 62FR41138, July 31, 1997)。

 

第2-1図は、1975-97年のCPsの変化を示したものである。この22年間でCO 69%減、NOx 40%減、オゾン31%減、鉛98%減、またPM-10は1988-97年の10年間で26%減と、米国の大気が圧倒的に清浄化されていることを示している。

これらの数値は、測定ステーションで得られた値の算術平均ではなく、NET値である。測定ステーションは多くなったとはいえ、広大な米国を網羅していないので、EPAは自動車、航空機、船舶、工場等のCPs発生源の推定走行あるいは稼動頻度からから求めたモデル値と測定ステーションでの実測値を加味して作成した値を排気傾向(National Emission Trend: NET)として毎年発表している。

 

第2-2図は、運輸部門から排出されるCPsの1970-97年における年次変化を示したものである。運輸部門においても、1980年以降CPsは減少しているが、第2-1図の全体CPsの減少傾向より若干鈍い減少傾向となっている。EPAの推定によれば、1997年移動汚染源(Mobile Source)からの各CPs排出量は、全体比CO 62%(53.842mil S.ton)、NOx 36%(8.573mil S.ton)、VOC 32%(6.138mil S.ton)、鉛13%(522ton)となっている。

特に、減少が顕著なのは1970年に汚染源全体の82%を占めていた移動汚染源からの鉛が、13%に減ったことである。現在では、移動汚染源からの鉛は航空機、非道路用車両、船舶、競争用自動車から少量排出されるのみである。PM-10に関しては、移動汚染源からの排出は全体の1%(0.414mil S.ton)の寄与率に過ぎないが、PM-2.5に関しては寄与率は4%(0.324mil S.ton)となっている。前述のごとく、PM-2.5の生成にはアンモニアが関係している。1997年の移動汚染源からのアンモニア排出寄与率は全体の8%(243ton)であったが、その98%は道路上のガソリン車によるものである。第2-2図ではアンモニアのみが1990年以降急激に上昇している。

 

第2-3図は、1997年度の運輸部門各分野のCPs寄与度を示したものである。図中、船舶はCommercial Marineとして表示されている。第2-3図により、船舶が汚染源となっているCPsを多い順に並べると、PM-10 8%、NOx 3.5%、VOC 0.8%、CO 0.2%、鉛 0%と何れも非常に少なく、EPAがある時点まで船舶からのCPs削減を重要事項として取り上げなかった理由が理解できる。

しかし、上記船舶からのCPs値はあくまで全国平均値であり、この数値のみから船舶からの排ガス規制を論ずることが困難であることは、後述する南カリフォルニアの例、アラスカにおけるクルーズ船の例等で明らかである。

 

 

 

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