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このあたりは米国が油濁防止で見せた国際条約への積極的関与と相違しているが、大型ディーゼルエンジンメーカーが米国に存在しない事実を考えればやむを得ない措置とも考えられる。

米国は、1989年エクソン・バルディーズ号のアラスカでの事故を契機に、1990年に油濁防止法(Oil Pollution Act of 1990: OPA90)を成立させ、その4115節で世界に先駆けてタンカーのダブルハル規制を実施し、その後米国が主導権をとってMARPOL 73/78にダブルハル条項13 F/Gを追加させた。

 

舶用エンジンからの排ガスについては、90年代のEPAの関心はむしろレクリエーション用ボートのガソリンエンジンに向けられ、ディーゼルエンジンからの排ガス規制については1994年一時規制案を提案したが取り下げて、国際海事機関(Internatinal Martime Organization: IMO)における附属書VIの動きを見守るという態度であった。

EPAは、レクリエーション用ボートのガソリンエンジンについて、環境上最も問題あるエンジンとして船外機(Out Board Engine: OB)及び水上オートバイ(Personal Water Craft: PWC)用2サイクルスパーク点火(Spark Ignition: SI)エンジンからの排ガス規制案を1994年に提案し、1996年10月4日最終案の公布にこぎつけている。当時、環境上あまり問題が無いとされ規制制定が先送りされていたガソリンSI船内外機/船内機(Sterndrive/Inboard: SD/I)についても2000年11月17日先行規則提案(Advanced Notice of Proposed Rule Making: ANPRM)を出している。ANPRMは、NPRMを出す前にEPAの大筋の考えを示し、一般からのコメントを求めるものである。

 

いずれにせよ、舶用ガソリンエンジンの排ガスについて現時点で強制基準化されているのは、上記1996年10月のものだけであるが、本規則は自動車で25年位かかった排ガス規制値の達成を数年間でやり遂げようとする内容となっている。そのため、EPAは業界が混乱することのないよう充分業界の意見を聴取し、完全な協力体制の下、エンジン自体の設計を変えるだけで排ガス規制値に段階的に無理なく近づける方法を採用している。

ディーゼルエンジンについては、EPAが国内商業船用の排ガス規制最終案を公布したのは1999年12月29日になってからであった。また、その中で将来公布するとしているレクリエーション用ボートディーゼルエンジンについては上記2000年11月17日のANPRMの中でガソリンSD/I、産業用大型SIエンジン(LPG、ガソリン、LNG)と共にEPAの考え方が示され、2001年秋から2002年秋にかけてそれぞれのエンジンに対する最終規則が公布されるものと予想されている。

 

 

 

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